Tokyo Tokyo FESTIVAL Archive - 東京文化プログラム記録集
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き交う中で様々なジャンルの団体がパフォーマンスを披露した。 ダイバーシティの理解促進や包容力のある共生社会の実現に寄与するため、アール・ブリュット作品の展示等を通じて、人々が多様な創造性に触れ、新たな価値の発見につながる機会を創出していくため、東京都は、令和2(2020)年2月に、アール・ブリュット等の拠点として東京都渋谷公園通りギャラリーを開設した。同ギャラリーでの企画展に加え、都内の自治体と連携した巡回展を実施している。 「東京キャラバン」は、“人と人が交わるところに新しい文化が生まれる”というコンセプトの下、全国でプログラムを展開。東日本大震災の被災地である東北(仙台・相馬)や熊本、高知など各地で地元のアーティストや芸能との交流による唯一無二のパフォーマンスを披露した。「東京アートポイント計画」や「ヘブンアーティスト」においても、被災地支援を目的とするプログラムが実施された。 平成30(2018)年から実施されている「TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL」(サラダ音楽祭)では、東京都と東京都交響楽団が、豊島区や東京芸術劇場と連携し、赤ちゃんから大人まで楽しめるフレッシュで多彩なプログラムを展開している。 また、連携や協力は国内にとどまらず、海外にも及んでいる。 「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World」は、東京芸術文化評議会の評議員であり、東京都交響楽団の音楽監督である大野和士氏による総合プロデュースのもと、東京文化会館と新国立劇場が史上初の共同制作を行い、世界で活躍するアーティストが集結してオペラを創り上げた一大プロジェクトである。令和元(2019)年7月、「オペラ夏の祭典2019-20Japan↔Tokyo↔World『トゥーランドット』」が東京文化会館をはじめ日本を代表する各地の劇場で上演された。 「パリ東京文化タンデム2018」は、都市間の文化交流の活性化に向けて実施した海外都市連携の好事例である。東京都、パリ市、アンスティチュ・フランセが協力し、東京都及びパリ市の文化施設等において多彩な文化イベントを実施した。平成30(2018)年11月には、パリ市庁舎前で風呂敷包みをイメージしたパビリオンを設置し、「風呂敷のアート」をテーマにした展覧会を実施したほか、パリ日本文化会館で田中久重(1799〜1881)による文字書き人形などの「からくり人形」の興行を再現する動態展示を行った。 令和2(2020)年、前年末に国外で発生した新型コロナウイルス感染症はまたたく間に世界中で拡大し、3月には、東京2020大会の1年延期が決定された。4月には、7都府県に緊急事態宣言が発出された。こうした状況を踏まえ、Tokyo Tokyo FESTIVALのプログラムはほとんどが延期となり、それぞれ、実施の時期や方法の見直しを進めることになり、プロモーションについても、大々的なものは控えるとともに、オンラインに軸足を置いたものに転換することとした。 新型コロナウイルス感染症は、令和2(2020)年の感染拡大当時、有効なワクチンや治療薬がなく、感染を防ぎ、感染を拡大させないことが対処方針であった。そのため、三密(密閉、密集、密接)を避けることやソーシャルディスタンスを確保するため、不要不急な行動の自粛などが求められ、学校が休校になるなど社会活動の多くが見直しや休止を余儀なくされた。Tokyo Tokyo FESTIVALに限らず、様々な芸術文化活動が中止又は延期になり、都立や国公立、都内の多くの民間の美術館・博物館及びホール・劇場も、一時期一斉に休館という事態となった。 こうした情勢のなか、文化の灯を絶やさないため、東京都は「アートにエールを!東京プロジェクト」を実施した。これは、東京都が全国に先駆けて始めたアーティスト支援事業で、活動を自粛せざるを得ないプロのアーティストやスタッフを支援する個人型と芸術文化団体による公演等を支援するステージ型の2つの類型があり、どちらも、制作した作品をオンラインで発信することで、アーティスト等の活動を支援するとともに、多くの都民に場所や時間を問わずにアートに触れる機会を提供した。 東京都に発出された一度目の緊急事態宣言は令和2(2020)年5月末に解除されたが、その後令和3(2021)年1月に2度目(3月に解除)、4月に3度目(6月に解除)、7月に4度目(9月に解除)の宣言が発出された。政府の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針を踏まえ、各業界は、早い段階から感染拡大防止と業界活動を両立させるためのガイドラインを定めた。Tokyo Tokyo FESTIVALの各文化プログラムは、これらのガイドラインに沿って実施していくことになった。 さらに、コロナ禍では、海外からの招へいにも大きな制約があり、海外の企画者のプログラムである「光の速さ ‒The Speed of Light-」(企画者:マルコ・カナーレ(アルゼンチン))や「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」(企画者:ジェイソン・ブルージュ・スタジオ(イギリス))、また都立美術館・博物館で行われた海外から展示品を手配する企画展などに大きな影響があった。 徐々に新型コロナウイルス感染症に関する知見が蓄積され、政府や地方自治体においても、徹底した感染防止対策の下で、安全なイベント開催を図っていくこととなる中、文化プログラムの実施においても様々な創意工夫が行われた。 令和2(2020)年6月、東京都交響楽団は試演会を実施し、エアロゾル測定の専門家や感染症専門医の協力のもとに、オーケストラの各パートの飛沫や奏者間の距離などの検証を行った。こうした検証を経て公演を徐々に再開し、9月には「サラダ音楽祭」が開催された。 都立美術館・博物館では、令和2(2020)年7月から開催された東京都美術館の「The UKIYO-E 2020 ─ 日本三大浮世絵コレクション」などをはじめ、展覧会において「日時指定入場制」を導入しながら展示が再開され始めた。また、東京文化会館や東京芸術劇場といった都立のホール・劇場施設では、入退場時の感染対策実施や、座席の間引き(市松模様での着席など)や歓声を控えるなどの対策を行いながら公演を再開していった。152新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大コロナ禍での文化プログラムの実施6.7.

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