Tokyo Tokyo FESTIVAL Archive - 東京文化プログラム記録集
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 同年秋、「東京芸術祭2020『どうやって出会う!』」が実施された。東京芸術劇場での、VR(仮想現実)技術を用い、観客が食堂のカウンターのような席に座った状況でVRゴーグルを装着して鑑賞する演劇『ダークマスター VR』(庭劇団ペニノ)といったテクノロジーを駆使した作品や、人材育成事業であるAPAF(アジア舞台芸術ファーム)をオンラインで開催するなど、コロナ禍を契機に生まれた実施手法もあった。 飛沫対策だけでなく、海外からの渡航制限や人流抑制策から、大きな影響を受けたプログラムもあった。東京都現代美術館が実施したアイスランド系デンマーク人アーティストの企画展「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」は、コロナ禍を受け、当初の予定会期を変更して実施した。展示制作においては、オラファー・エリアソン本人が渡航制限により来日できないため、リモートでの展示監修が行われるなど、美術館運営の新しい取組となった。江戸東京博物館の特別展「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」も、本来国立ベルリン・エジプト博物館の各部門の学芸員が来日して展示監修する計画だったが、渡航制限のため、副館長1名が来日し、現地の学芸員とリモートにより、展示監修を行った。 スペシャル13「放課後ダイバーシティ・ダンス」も、コロナ禍の影響により当初の企画から大幅な変更を余儀なくされた。当初は、港区・国立市・日の出町のそれぞれの子供たちが、「派遣舞踊家」の指導のもとオリジナルの振付を考えて作ったダンス作品を、最終的に都内の劇場で上演する予定であった。これを、「創作」のプロセスを体験するワークショップへと実施方針を修正し、その成果を保護者・関係者向けに発表するとともに、ドキュメント映像で残す形とした。また、ワークショップも一部オンラインへの振替を行った。 コロナ禍が続く中、東京都現代美術館の「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」や東京都庭園美術館の「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」といった、都立文化施設の特性を活かした多彩な展覧会を行った。 令和3(2021)年4月、それまでスペシャル13のうち「シークレット企画」としていたプログラムである「東京大壁画」の内容を発表した。東京駅前の丸の内ビルディングと新丸の内ビルオリンピック・ディングの壁面に、高さ150パラリンピックメートル、横幅25メートルを超開催年におけるえる巨大壁画アートを展開するもので、横尾忠則氏・美美氏親Tokyo Tokyo子それぞれの作品が同年7月にFESTIVALの展開完成して公開された。 4月以降、「DANCETRUCKTOKYO」、「光の速さ‒TheSpeedof Light-」、「隅田川怒涛」、「TOKYOSENTOFestival2020」など、スペシャル13のプログラムが実施されたが、緊急事態宣言の発出や人流抑制などの社会情勢を受け、感染予防に配慮した実施となり、プロモーションも含めて慎重に行わざるを得なかった。例えば、舞踏をコアにしたプログラム5 当時、5,908人で最多であった。6 新国立劇場での公演は実施された。「TOKYO REAL UNDERGROUND」は、コロナ禍で企画を大幅に見直し、映像作品のウェブ配信を中心とした。 東京都美術館では4月から「イサム・ノグチ 発見の道」、東京都写真美術館では5月から「新・晴れた日 篠山紀信」、江戸東京博物館では7月から企画展「相撲の錦絵と江戸文化」や特別展「大江戸の華―武家の儀礼と商家の祭―」が開催された。 東京2020大会に関しては、代々木公園などで予定されていたライブサイトやパブリックビューイングの中止が6月に決定した。7月になり、8日に一都三県の会場での無観客開催が決定した後、12日から東京都に4度目の緊急事態宣言が発出された。23日に東京2020大会が始まったが、都内の新型コロナウイルス感染症の日ごとの感染者数は増加傾向がみられ、8月13日には、1日あたりの感染者数が最多となった5。大会開催とともに、クライマックスを迎えたTokyoTokyoFESTIVALは、このような厳しい状況の中、感染対策を徹底して継続した。 7月には「TURNフェス2021」が始まるとともに、スペシャル13の「パビリオン・トウキョウ 2021」や「東京大壁画」、「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」が展示初日を迎えた。「まさゆめ」は、事前の告知なしで、東京の空に巨大な顔を掲揚し、SNSでトレンド入りし、ニュース番組でも取り上げられるなど、大きな話題となった。8月には、「世界無形文化遺産フォーラム」や「漫画『もしも東京』展」が開催され、スペシャル13の全てのプログラムを実施することができた。 大会の開始直前から大会期間においては、選手村や有楽町の東京都メディアセンターにて、動画放映や作品展示を通じて、伝統文化・芸能を体感できる空間を提供するなど、選手や大会関係者、メディアらに東京の芸術文化の魅力を広く発信したほか、東京都美術館では、前年の東京都現代美術館に続き「東京2020公式アートポスター展」を行った。 一方で、残念ながら、開催を断念したプログラムもあった。「オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』」の東京文化会館での公演は、公演関係者の新型コロナウイルス感染が確認されたため公演準備が整わず、中止せざるを得なかった6。「東京キャラバン」は、東北をはじめ日本各地から演者を東京に招聘する計画だったが、緊急事態宣言下での招聘が難しく、開催を断念した。Tokyo Tokyo FESTIVAL助成の採択事業も最終的に中止となったものがあった。 令和2(2020)年以降のプログラムは、企画の変更や運営方法の見直しを行い、かつ、感染対策に最大限配慮するなど、予想だにしなかった様々な困難を乗り越えながらの実施となったが、そのような中でほとんどのプログラムをやり切ることができ、東京2020大会の最終日である9月5日をもって、TokyoTokyoFESTIVALは終了した。1538.

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