• SPECIAL INTERVIEW

スポーツを“支える”だけでなく、
“関わる”“創る”ボランティアへ

スリーチアーズ

PROFILE

今年2月のサンウルブズ戦に参加したメンバー

スリーチアーズ

2020年1月に創設された地域に根ざした貢献活動を行うボランティア団体。発起人は元早稲田大学ラグビー蹴球部で練馬区ラグビーフットボール協会の理事長を務める勝田譲さん。
メンバーは勝田さんがコーチを務める練馬ラグビースクールの選手、指導者、保護者がメインで、現在は約20名が登録している。うち10人以上がラグビー国際大会でのボランティア経験を持つ。

スリーチアーズは地域貢献を目指すボランティア団体。ラグビーワールドカップ2019™日本大会を支えたボランティア「TEAM NO-SIDE」でリーダーをつとめた元早稲田大学ラグビー蹴球部の勝田譲さんが発起人となり立ち上げました。ワールドカップのボランティア経験者をはじめ、ラグビーを愛するメンバーが集っています。ここでは、「スポーツを通じたボランティアの魅力」「ラグビーを通じた地域への貢献」について、スリーチアーズのメンバーの言葉から迫ります。

ラグビーを通じた
ボランティアのはじまり

ある晴れた日曜日。東京・練馬区にある人工芝の運動場では青空のもと、3歳から中学生までの子どもたちがラグビーボールを夢中で追いかけています。「練馬ラグビースクール」の練習風景です。スリーチアーズのメンバーはこの練習のなかでコーチとして参加しています。

スリーチアーズ発起人・勝田譲さんが練馬区ラグビーフットボール協会の理事長であり練馬ラグビースクールのコーチでもあったことから、スリーチアーズは練馬で立ち上がりました。その源流は、世界のプロチームが参加するラグビーリーグ・スーパーラグビーに参戦する日本のチーム「サンウルブズ」創設時に遡ります。勝田さんは「日本のチームをささえたい」という思いから、サンウルブズのボランティアチームのリーダーに。サンウルブズのボランティアチームはいくつかのボランティア団体の集合体で、サンウルブズの試合ごとに観客の誘導やチケット受け渡し、物販やラグビー体験コーナーの運営、さらには試合後のスタンド清掃までおこなっています。そして勝田さんは昨年のラグビーワールドカップではボランティアチーム「TEAM NO-SIDE」の岩手・釜石会場のリーダーとして大会を裏で支え、盛り上げました。

この経験をもとに今年1月、勝田さんはワールドカップのボランティアを経験した地元練馬のメンバーとともにスリーチアーズを立ち上げました。現在は20名ほどのメンバーで、練馬ラグビースクールのコーチや、練習場の周辺や区内の清掃活動、そしてサンウルブズの試合のサポートを主な活動としてボランティアをしています。このメンバーをまとめる二人のリーダーにボランティアへの思いを聞きました。

PROFILE

今年2月のサンウルブズ戦に参加したメンバー

スリーチアーズ

2020年1月に創設された地域に根ざした貢献活動を行うボランティア団体。発起人は元早稲田大学ラグビー蹴球部で練馬区ラグビーフットボール協会の理事長を務める勝田譲さん。
メンバーは勝田さんがコーチを務める練馬ラグビースクールの選手、指導者、保護者がメインで、現在は約20名が登録している。うち10人以上がラグビー国際大会でのボランティア経験を持つ。

スポーツに、サポートする立場で関わる喜び

一人は取材当日、ボランティア活動の一環としてニュージーランド代表のユニフォームに身を包み、オールブラックスの代名詞「ハカ」を子どもたちや練習を見学にきた父兄に教えていた工藤光由さん。

工藤さんは長男がラグビースクール生になったのを機にこのスクールの指導者になりました。もともとコーチとして12年ほど前からラグビースクールに関わっていましたが、今年スリーチアーズが立ち上がってからはラグビーを通したアクティビティや運動場周辺の清掃など、コーチ以外のボランティアスタッフとしてもラグビーチームに関わっています。そんな工藤さんが本格的にボランティア活動を始めたのは4年前。勝田さんと同じくサンウルブズのボランティアがきっかけでした。それまではボランティアと縁がなかった工藤さんですが、経験したことでボランティアに対する印象が変わったと言います。

「スポーツにはプレーヤーやコーチとして関わってきましたが、サポートする立場で関わることもできるということが大きな発見でした。今まで知らなかった世界ですが、とても楽しい経験だったんです。スポーツをサポートしている人たちがたくさんいることもそこで知りました」

スポーツに対する見方も一変したそう。

「スポーツは試合や大会を支える人がいるからこそ成り立つということを実感したんです。プレーヤーもコーチも、サポートするメンバーやボランティアがいるからこそ目一杯輝けるんですよね。子どもたちもそのことを感じて、感謝の気持ちを持ってラグビーを楽しく続けてほしいと思っています」

サンウルブズでスポーツを通したボランティアの奥深さを知った工藤さんは、ラグビーワールドカップでのボランティアも経験しました。有楽町駅の近くに設置された大型ビジョンで試合を観ることのできる「東京ファンゾーン」で、会場に訪れたラグビーファンのサポートも担当しました。

いまはスリーチアーズとして、ラグビースクールのコーチングをし、練習前の公園の清掃では先頭に立ち、練習中でも子どもや父兄を楽しませるイベントを企画して実践しています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会でもボランティアをする予定で、
「オリンピックの経験をスリーチアーズの地域ボランティアの活動に還元できれば」
と考えているそうです。

地元とラグビーに恩返しするためのボランティア

もう一人のボランティアリーダーの松野あい子さんも長男がラグビースクールに入会したのを機にボランティアに携わるようになりました。いまは主にスクールのサポートを担当。ボランティア活動をするようになったきっかけを、松野さんはこう語ります。

「長男、次男とスクールにお世話になって9年目になりますが、地域の方に教えてもらっているラグビーに何か恩返しがしたかったんです。『私には何ができるの?』と考えた時にボランティアが浮かんだんです。ラグビーを盛り上げ、またそこから地域も盛り上げる支えになれたら。それで昨年のワールドカップで初めてボランティアをして、いまはスリーチアーズをメインにボランティア活動をしています」

松野さんがボランティアを始めたのは母親としての思いも強かったそう。
「息子たちにラグビーに関わっているところを見せたかったんです」。
ワールドカップでは工藤さん同様に、有楽町の「東京ファンゾーン」のボランティアを担当。会場の清掃や銀座の街中でファンゾーンへの誘導などを行いました。活動を通して感じたのが、ラグビーが老若男女問わず幅広く愛されているスポーツだということ。また自分が支える立場になって、地域に根ざし、子供たちを支えてくれている練馬ラグビースクールへの感謝がより強くなり、またボランティアでスポーツにかかわる素晴らしさに気づいたそうです。

ワールドカップのボランティアを終えると嬉しいことも。小学6年の次男から「もしまた日本にワールドカップが来たときにプレーヤーとして出られなかったら、ボランティアで参加したい」と言われたそう。こうしてスポーツを通じたボランティアへの思いは、受け継がれていきます。

“支える”ボランティアから一歩進んで
“関わる”“創る”ボランティアへ

発起人の勝田さんがスリーチアーズを立ち上げたのは、
「いろいろなスポーツを通じたボランティア経験を、自分たちが暮らし、自分たちが指導するラグビースクールの拠点でもある練馬に還元したい」
という思いが強かったから。チーム名はラグビーの試合終了後、ノーサイドの後に互いの健闘を称える儀式=スリーチアーズから取ったそう。

勝田さんは大学ラグビー部では花形選手として活躍しました。在学中は快速ウィングとして活躍した一方で、自ら希望して主務(マネジメント)も兼務しました。この二足のわらじはラグビー部では前例がなく、プレーヤーと裏方という両面を経験することで「スポーツはプレーする人もいれば、支える人がいると、身を持って知ったんです」と言います。

そんな勝田さんのボランティア団体運営のモットーは、「自発性と、自らが楽しむこと」。
「ボランティアの組織を運営するときに、自発的に楽しみながらボランティアをすれば、現状を良くするための(ボランティアの)アイディアも生まれてきます。“支える”ボランティアから一歩進んで、“関わる”ボランティアとして、自分たちでスポーツを“創る”こともできるんです。2012年のロンドンオリンピックでは、ボランティアのことを“ゲームズ・メーカー”と呼んでいました。運営者の一人という位置付けなんです」。

“ゲームズ・メーカー”はロンドンオリンピック・パラリンピック組織委員会が運営したボランティアであり、この言葉には「ボランティアに参加した誰もがゲームをつくるメンバー」という思いが込められているそう。この言葉にスポーツを通じたボランティアの醍醐味が詰まっています。

スリーチアーズは、サンウルブズのボランティアにも参加していますが、大会の主催者や運営者だけでは手が回らないファンサービスをすることも、ボランティアの役割だと勝田さんは言います。ボランティアのアイディアから生まれた「ボールに触ってみよう」というアクティビティでは、一人でも多くの来場者にラグビーボールを触ってもらいワクワクを体感してもらおうとボランティアは奔走します。ボールに直接触れることで選手や試合がより身近なものとなり、「ラグビーボールに初めてさわって楽しい!」という子どもたちの声もたくさん届くようになりました。

「スポーツでは応援しているチームが負けたり、雨が降って天候に恵まれなかったりということもあります。そんなときでもスタジアムの空間で何か楽しめたら、満足度も変わってきますし、子どもにとっては特に思い出になると思います。そこでのファンサービスを担えるのがボランティアで、活動の醍醐味の一つだとも思います」

スリーチアーズは、スポーツを架け橋に、人と地域をつなぎます。ラグビースクール練習前の清掃では、スリーチアーズのリーダー工藤さんがまわりの父兄に声をかけたところ50人以上がスリーチアーズに合流して、運動場周辺の清掃活動に参加しています。父兄からは
「いつも息子がラグビースクールで運動場を利用させてもらっているので、感謝の気持ちを込めてやらせてもらいました」
「機会があればまた参加したい」

という声もあがっていました。スポーツを通じたボランティアは、人と人、人と地域をつなぎ、これからの地域活性のひとつになっていくはずです。

MESSAGE 「みんなで支える みんなで創る 新しい自分を発見してもっとスポーツを楽しんじゃおう」スリーチアーズ 勝田譲
MESSAGE 「みんなで支える みんなで創る 新しい自分を発見してもっとスポーツを楽しんじゃおう」スリーチアーズ 勝田譲