高齢者と社会の架け橋に傾聴ボランティアの役割とは 高齢者と社会の架け橋に傾聴ボランティアの役割とは 0
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高齢者と社会の架け橋に
傾聴ボランティアの役割とは

全国的に高齢化が進み、一人暮らしの高齢者も増える傾向にある中、それに伴って孤独死や詐欺被害なども問題となっています。各地域のネットワークを活かした訪問や見守りなども展開されていますが、高齢者を支える活動の一つとして、傾聴ボランティアの役割が注目されています。何気ない会話の機会を得ることが、高齢者の心のケア、そして生活の質の向上につながると期待されています。高齢者施設や個人宅での活動を行ってきた、東京都町田市の傾聴ボランティアグループ「ぐるーぷ・そらまめ」「水無月21」の皆さんと、その活動をサポートする社会福祉法人町田市社会福祉協議会の「町田ボランティアセンター」の担当者に、傾聴ボランティアについて伺いました。

心で聴いて、相手の心に寄り添う

傾聴とは漢字の通り、耳を傾けて熱心に聴くことを意味する言葉です。もともとはカウンセリングのコミュニケーション技能の一つでしたが、近年は家庭や会社などの人間関係構築にも大きなメリットをもたらすものとして、知られつつあります。ただ「聞く」こととの違いについて、「ぐるーぷ・そらまめ」の津川さんは次のように説明します。

「傾聴とは、耳で聴くだけではなく、心で聴くことを指します。つまり、相手の心に寄り添うことなのです。話し手の話をありのまま受け入れ、自分の価値観と違っていても否定せず、分かち合い、相手を理解しようとすることから始まります」

傾聴ボランティアの養成講座の様子。参加者がロールプレイングを行う(町田ボランティアセンター提供、2019年6月撮影)
傾聴ボランティアの養成講座の様子。参加者がロールプレイングを行う(町田ボランティアセンター提供、2019年6月撮影)

傾聴の重要性が広く知られるきっかけとなったのが東日本大震災です。被災者に寄り添う傾聴ボランティアの活動により、「人は誰かに話を聞いてもらうことで心が軽くなる」ことが改めて認識されるようになりました。

自殺防止や子育てなど幅広い分野で傾聴ボランティアが活動していますが、高齢化社会において、高齢者を支える傾聴ボランティアの必要性も増しています。「水無月21」の林さんは高齢者の状況についてこう話します。

「最近増えていると感じるのが、故郷で暮らしていたお父さん、お母さんが一人になってしまい、都会に住む子どもが呼び寄せたケース。そうすると子どもは外で働いていますから、高齢の親は知らない土地で一人ポツンと過ごすことになってしまいます。友達も周りにおらず、誰かと話をする機会が減ってしまうのです」

デイサービスをはじめ、地域には高齢者の交流の場も用意されているはず。そういう場に行けばいいのではと考えてしまいがちですが、実際はそう簡単なことではないといいます。林さんは活動の中で、次のような経験をしたそうです。

「知らないところへ行くよりも家で話をしていたいと言われたことがありました。確かに、集団に交じりたい人ばかりではありませんよね。ですから、こちらから“交流の場に行ってみては”とは基本的には言いません。ただ個人での傾聴の回数を重ねているうちに、“外に出てみようか”と前向きになる方はたくさんいます」

自身の経験から傾聴の必要性を感じ、ボランティアに

傾聴ボランティアの活動を始めたきっかけは人それぞれ。「生活で仕事のウェイトが下がり始めて、何かやってみたいなと考えていた時に傾聴を知り、これだと思ったんです。高齢になる人が高齢の人を支える。社会参加のいい機会だと思いました」と「ぐるーぷ・そらまめ」の会長の金子さんが話せば、「私も何かしたいと思いつつ何ができるかわからなかった時に、町田市の広報で傾聴ボランティアの養成講座を見つけて参加しました」と林さん。

養成講座で、グループワークに取り組む参加者(町田ボランティアセンター提供、2016年8月撮影)
養成講座で、グループワークに取り組む参加者(町田ボランティアセンター提供、2016年8月撮影)

自身の経験から傾聴の必要性を感じたと話すのが、津川さんです。

「母が施設でお世話になっていたのですが、この母がとてもおしゃべり好きで。家族が交代で通っていましたが、母がいつももっと話したそうなのが気になっていたんです。どうしようと思っていた時に、市の社会福祉協議会で発行している社会福祉だよりで傾聴ボランティアの養成講座の案内を見つけて、勉強してみようと思いました。母が亡くなり、傾聴の姿勢で母と接する機会はあまり多くは持てなかったのですが、それでも少しは、心で聴くことができたのではないかと思っています」

コロナ禍で模索 オンライン傾聴に取り組む

傾聴を通じて高齢者のケアを支えてきた両団体ですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、高齢者施設への訪問など活動全体がストップしました。傾聴ボランティアを待つ高齢者もいる中、活動の方法を模索して昨年9月に始めたのが、オンライン会議システムを使った傾聴です。

オンライン傾聴では、歌の歌詞を手に持って画面越しに見せるなど工夫を重ねている(町田ボランティアセンター提供)
オンライン傾聴では、歌の歌詞を手に持って画面越しに見せるなど工夫を重ねている(町田ボランティアセンター提供)

「直接お会いして話すのが傾聴だと考える人が多く、団体としては最初はあまり前向きではありませんでした。しかし活動しないまま半年が過ぎ、そんな時に町田ボランティアセンターから提案があり、オンラインでの傾聴を始めました」(金子さん)

対面での傾聴との違いにとまどいつつも、メンバーは工夫を重ねています。

「対面だと身ぶり手ぶりを交えたりしてコミュニケーションをとりますが、オンラインだと一方的に話してしまいがちです。ただ、回数を重ねるにつれて少しずつうまくいくようになってきたと感じます。コロナの後も、風邪などで少し体調が良くない時にオンラインなら傾聴ができますよね」(津川さん)

「オンライン傾聴の際も、絵や写真を持って見せながらお話するんです。今こんな花が咲いてますよとか。写真を見せながら話すと、直接会えなくても、同じ空気を共有しているような気分になり、話が弾むんです。歌の歌詞をお見せしたら、楽しそうに歌いだした方もいらっしゃいました。傾聴は直接お会いして話すのが基本ではありますが、できることを一歩、一歩、進めていこうと思います」(金子さん)

調整を進めた町田ボランティアセンターの藤永麻理奈さんは、「高齢者の方からはオンラインでも話せて楽しかったという声が寄せられています。初対面だったり、時間も限られたりする中でどうやって信頼関係を築くかは課題ですが、これからも工夫して取り組んでいきたいです」と話します。

傾聴を通じて自分自身も成長

傾聴とは心で聴くこと。言葉にすると簡単なようですが、初めて会う人や世代の違う人に対して実践するのは難しく、技術を必要とします。なかなか心を開いてもらえないケースも多々あるといいますが、そんなときこそ焦らずに相手に向き合うといいます。

「最初は下を向いている人や話さない人もたくさんいます。でも、何度も傾聴に伺って、写真を見せたり、歌を歌ったりしているうちに、だんだん相手の空気が和やかになり、少しずつ向こうから話してくれることもあるんです。こういう時は本当にうれしくて、傾聴をやっていてよかったと思います。やりがいと言えばもう一つ、自分自身が勉強して成長できることも挙げられます。相手との話から知らなかったことを知るというのはいくつになってもうれしいものです」(津川さん)

オンライン傾聴で笑顔をみせる高齢者(町田ボランティアセンター提供)
オンライン傾聴で笑顔をみせる高齢者(町田ボランティアセンター提供)

林さんも傾聴の活動が自分の力にもなっていると話します。

「傾聴に伺うたび、相手との会話が自分のパワーになっていることを実感します。皆さんに違う人生があり、そこから生まれる考えもさまざま。それらを聴くたびに自分の世界が広がったように感じます」

誰もが安心してしあわせに暮らせるまちづくり
支援の輪を

「ぐるーぷ・そらまめ」や「水無月21」をはじめとしたボランティア団体のサポートや、傾聴ボランティアなどの養成講座、一般の方へのボランティア情報の提供を行っているのが、「町田ボランティアセンター」です。ホームページを見ると、傾聴の他にも、外国人に日本語を教える団体や、絵を通じて心理的な支援を行う団体など、多種多様なボランティア活動がずらり。なるべく多くの人の目にとまるよう、町田市の広報や町田市社会福祉協議会の機関誌、ホームページなどを通じて広く情報提供をしているといいます。

新型コロナウイルスの影響でボランティア活動の多くがストップする中でも、各ボランティア団体の活動を支援しようと、町田ボランティアセンターは動いてきました。特別養護老人ホームやボランティア団体と連携してオンライン傾聴に取り組むほか、コロナ禍での新たな活動を支援するためのクラウドファンディング「みんなでコロナを乗り越えるぞ基金@町田」も実施。支援を届けようと現場で日々奮闘している団体をサポートしています。

コロナ禍でボランティア活動の新たな形を模索。町田市医療と介護の連携支援センター、特別養護老人ホーム、社協の三者が協力して、オンラインでボール体操に挑戦した(町田ボランティアセンター提供)
コロナ禍でボランティア活動の新たな形を模索。町田市医療と介護の連携支援センター、特別養護老人ホーム、社協の三者が協力して、オンラインでボール体操に挑戦した(町田ボランティアセンター提供)

町田ボランティアセンターの和田正成さんは、傾聴ボランティアについてこう期待しています。

「社会福祉協議会の目標は『誰もが安心してしあわせに暮らせるまちづくり』です。その観点から言っても、高齢者一人ひとりに寄り添う傾聴ボランティアの役割は大きいです。介護施設やデイサービスだけではすべての人の“話したい気持ち”をカバーできるわけではありません。今後、高齢化がさらに進むにつれ、傾聴の必要性は高まっていくと考えています」

町田ボランティアセンターと地域の学生団体が協力し、若い世代向けにボランティア活動のイロハを紹介した「ボランティアの心得冊子」を作成(町田ボランティアセンター提供)
町田ボランティアセンターと地域の学生団体が協力し、若い世代向けにボランティア活動のイロハを紹介した「ボランティアの心得冊子」を作成(町田ボランティアセンター提供)

新型コロナウイルスの終息が見えず、以前と同じような活動ができる日はまだ遠いように感じる状況ですが、今後のビジョンについても前向きに語ります。

「オンライン環境が整えば、デイサービスや特別養護老人ホームでのオンライン傾聴をもっと浸透させ、ゆくゆくは個人宅などにも広げたいですね。ボランティア活動は、ボランティアセンターだけでできることは少ないのですが、ボランティア団体やボランティア先の方たちと力を合わせて、新しい工夫やつながりを生み出していきたいです。何かしたいという人にも支援の輪に入ってもらいたいですね」

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町田ボランティアセンターでは、ボランティアについて様々な相談ができる
町田ボランティアセンターでは、ボランティアについて様々な相談ができる

町田ボランティアセンター

社会福祉法人町田市社会福祉協議会の「ボランティアの総合窓口」。ボランティア活動をしてみたい個人や団体の登録や、ボランティアコーディネート、ボランティア団体の情報提供や活動の支援をおこない、市内のボランティア活動を推進している。

住所:〒194-0013
   東京都町田市原町田4-9-8 町田市民フォーラム4F

電話:042-725-4465

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MESSAGE 町田ボランティアセンター 和田 正成さん 一人で新しいことを始めるのは難しいと思います。地域のボラセンがお手伝いしますので、ぜひ一緒に始めましょう!MESSAGE 町田ボランティアセンター 和田 正成さん 一人で新しいことを始めるのは難しいと思います。地域のボラセンがお手伝いしますので、ぜひ一緒に始めましょう!
MESSAGE 町田ボランティアセンター 藤永 麻理奈さん 特別なことではなく、身近でできる小さな活動も地域を支えています。傾聴のように、相手に歩み寄ろうとする気持ちで、相手だけでなく自分自身も豊かになれます。これからも、みなさんと一緒にわくわくすることに挑戦していきます。MESSAGE 町田ボランティアセンター 藤永 麻理奈さん 特別なことではなく、身近でできる小さな活動も地域を支えています。傾聴のように、相手に歩み寄ろうとする気持ちで、相手だけでなく自分自身も豊かになれます。これからも、みなさんと一緒にわくわくすることに挑戦していきます。