• SPECIAL INTERVIEW

「私たちがつくる東京2020大会」
シティキャスト(都市ボランティア)座談会

東京2020オリンピック・パラリンピック大会(東京2020大会)では、多くのシティキャスト*(都市ボランティア)が活動しています。どうしてボランティアを志したのか。これまでの活動を通して得た気づきや学びは。今回の大会でシティキャストとして活動されている儀賀亜紀子さん、柴﨑保子さん、竹澤真治さん、西野俊治さんの4人にうかがいました。(この記事は令和3年6月に取材・制作したものです。大会の無観客開催により、シティキャストの活動内容は一部変更となっています。)

*シティキャスト:東京都が運営し、東京2020大会時に観客等へのご案内や大会の応援、安全・安心な大会開催のサポート、東京・地域の魅力発信などの活動を行う。

MEMBERMEMBER
  • 儀賀 亜紀子さん

    地元・東京で開催されるオリンピックに関わりたいと考え、ボランティアを始める。同じ志を持つ多くの仲間との出会いが活動のモチベーション。

  • 柴﨑 保子さん

    東京生まれ、東京育ち。東京で開催された国体のボランティアへの参加をきっかけに、ボランティアの世界へ。町田市のボランティア団体「まちだサポーターズ」に所属。

  • 竹澤 真治さん

    栃木県出身の会社員。ボランティアとして初めて参加した東京マラソンをきっかけに、北海道、横浜、名古屋、大阪と全国各地のマラソン大会でボランティア活動をしている。

  • 西野 俊治さん

    ランナーとしてボランティアに励まされた経験から、今度は選手を支えたいと考えボランティアの道に。ボランティアの魅力は「大勢でひとつのことを成し遂げて得られる達成感」

  • 儀賀 亜紀子さん

  • 柴﨑 保子さん

  • 竹澤 真治さん

  • 西野 俊治さん

東京開催が決まった時に
参加を決めた

――みなさんが東京2020大会にシティキャストとして参加しようと思った理由を教えてください。

儀賀:2013年に東京が五輪の開催地になることが決まってすぐ、地元で行われるオリンピック・パラリンピックにボランティアとして参加したいと思いました。インターネットでスポーツボランティアについての情報収集を始め、「ボランティアとは何だろう」「自分にできることは何だろう」と考えながらマラソン大会のボランティアなどで経験を積み、東京2020大会に向けて準備をしてきました。シティキャストとフィールドキャスト*(大会ボランティア)の両方に応募しました。

*フィールドキャスト:東京2020大会組織委員会が運営し、競技運営のサポートなど大会運営を支える。

東京スタジアムであったラグビーワールドカップでは観戦客のおもてなしをする「観客サービス」を担った。

柴﨑:私も、開催が東京に決まった時からボランティアとして大会に関わりたいと思いました。子育てがひと段落して、時間に余裕ができたタイミングと重なったという事情もあります。地元の近くで国体のボランティアを募集していたので不安ながらも参加したところ、ボランティアに関する情報が耳に入るようになり、活動範囲も広がりました。特に2014年に東京マラソンのボランティアを経験した時はすごく楽しくて、東京2020大会にも絶対に参加したいと思い、シティキャストとフィールドキャストに応募しました。

竹澤:私もシティキャストとフィールドキャストの両方に応募しました。色々な体験をすることは、仕事や人生に必ず生かせると過去の経験からわかっていましたし、これまで経験したボランティアがとにかく楽しい思い出ばかりだったからです。

西野:私もシティキャストとフィールドキャストの両方に応募しました。“どういう形でもいいので大会に関わりたい”という気持ちからです。

安全・安心な大会を
自分たちでつくる

――みなさんはスポーツボランティアの経験が豊富なのですね。シティキャストとしてはどのような心構えで大会に携わろうと思っていますか。

西野:役割としては会場までの交通案内や、会場周辺の案内になります。知らない土地で不安を感じる方もいると思うので、そうした不安を取り除き、みなさんの気持ちを盛り上げられたらいいなと思っています。

活動回数が増えれば仲間も増えていく。毎回、様々な仲間と出会えることもボランティアをする楽しみだ。

儀賀:観客のみなさんが最初に出会うのが私たちシティキャストなので、いかにワクワクしてもらえるかが大切だと思っています。そのうえで、競技会場のフィールドキャストにみなさんをスムーズにつなげるように頑張りたいです。また道案内のプロフェッショナルとして、日陰のポイントやエレベーターの場所などを案内できればと思います。

柴﨑:東京を楽しんでもらえるよう、何かアイテムを用意するなど、印象に残る写真撮影のお手伝いができないかと思っています。また、新型コロナウイルスの感染症対策をしっかりと考えて工夫したいです。

儀賀:安全・安心な大会を主体的にシティキャストの手でつくっていきたいです。私たちが不安そうにしていたら、周りの人たちが困ってしまいますよね。そのために自分に何ができるのか、いつも以上に考えさせられます。基本的には、自分自身がいかに安心して楽しめるか、という観点が大切だと思っています。

竹澤:一番に考えたいのはやはり安全・安心な大会の運営です。今回はコロナ禍でハイタッチができないなど色々な制約があると思いますが、みんなが楽しく、安心して応援できるように、私たちひとりひとりが考えることで、よい大会になるのではないでしょうか。

日本の素晴らしさを発揮できる
大会に

――準備段階の研修やテスト大会で印象に残ったことはありましたか。

柴﨑:シティキャストの共通研修に、ファシリテーターとして参加させていただきました。ボランティアの魅力を伝えるため、どうしたら参加者が長丁場の研修を飽きずに最後まで受けてもらえるかを考えながら取り組みました。

東京マラソンではボランティアユニフォームが配布される。カメラが向けば自然と笑みがこぼれる。

西野:私もファシリテーターとして参加しました。会場内で研修を受けるみなさんと目があうとお互いが笑顔になり、楽しい雰囲気を共有できたことが印象的でした。あっという間に時間が過ぎました。

儀賀:そうですよね。研修会場に集まった人たちからは、ここから東京2020大会が始まるのだという楽しさが伝わってきて、一体感がありました。また、私は、ビーチバレー、トライアスロンのテストイベントにも参加しました。不安もありましたが動線がしっかりと考えられ、休憩もタイミングよくとれるようになっていて、安心感がありました。暑さ対策として、東京都が用意してくれた頭にかぶるタイプの傘も実際にかぶってみましたが、風通しがよく、実用的で、やはり現場で実際に体験することが大事だと実感しました。

竹澤:私はテストイベントには参加していませんが、これまでのスポーツボランティアの経験から東京2020大会に期待していることがあります。例えばマラソン大会では、沿道で応援する人が選手に近づきすぎてしまい、危険な時があります。そうした時、私たちボランティアから説明して下がってもらうのですが、みなさんとても協力的で、周りの人たちもそれに合わせて自然と選手から距離を置くようになります。そうした時、マナーのよさを感じてうれしくなるのです。東京2020大会はコロナ禍で様々なことがあると思いますが、日本が本来持つすばらしさ(「おもてなし」の心)を発揮して乗り切れたらと思います。

標高1000mを超える高原地帯が舞台となる「星の郷八ヶ岳野辺山高原100kmウルトラマラソン」。まだ星空が出ている早朝に始まり1日が長いが、そのぶん充実感もある。

柴﨑:私は交通案内をするにあたって改めて自分の住む町を歩いているのですが、そうすると、もう知り尽くしていると思っていても、知らなかったお店や見どころがまだあることに気がつきます。まさにおもてなしの心で、そうした魅力を伝えたいです。

ボランティアで感じる
ワンチームの達成感

――みなさんにとってボランティアの魅力とは何ですか。

儀賀:「みるスポーツ」「するスポーツ」「ささえるスポーツ」という言葉がありますが、ボランティアは「ささえるスポーツ」にあたります。若い人から仕事を引退した人生の先輩まで、普段はなかなか出会う機会がない様々な世代の方々と一緒に大会を支えることで、私たちもスポーツに参加できることが魅力です。他のボランティアの方の素晴らしい統率力を目にすることもあり、学びも大きいです。

そろいのユニホームに笑顔が映える。ラグビーワールドカップでボランティア仲間と。

柴﨑:ボランティアを続けていると現場ごとに誰かしら知っている方がいますので、そうした方々に会えることも楽しみです。儀賀さんがおっしゃった「統率力」など、仕事で生かせる学びも多いと感じます。人との出会い、地元の魅力発見――ボランティアに参加することで得られる学びは大きいです。

竹澤:私も仕事に活かせる部分は大きいと思っています。特に東京マラソンのボランティアはマネジメント力が優れており、組織の仕組みや人材育成など多くを学べました。また、私はランナーとして応募したものの、抽選に外れてしまい、妻とボランティアに参加した経験があるのですが、普段は見られない妻の一面を知ることができたのもよかったです。ボランティアに参加することで、仕事にも生活にも活かせる大きな気づきがありました。ただ、そうした難しいことは抜きにしても純粋に楽しいし、リフレッシュできることも大きな魅力です。

西野:競技に参加した方だけではなく、私たちボランティアも達成感を味わえるのが魅力のひとつです。前々から準備して、当日を迎え、無事に活動を終えることに達成感を毎回感じられますし、チーム力を感じます。ワンチームとして活動できることが楽しいです。

緊張感すら楽しんで

――多くの魅力を感じているみなさんから、ボランティアに不安を感じている方やこれから始めようと思っている方にアドバイスをいただけますか。

西野:私はマラソンが好きで、普段はランナーとして大会に参加しているのですが、2006年にホノルルマラソンに出場した際、事務局からボランティアのお誘いがあり、受付業務などを経験したことがボランティアデビューでした。そこで、私たちが大会を楽しめるのはこうした方たちのおかげなのだと初めて知りました。それから積極的にボランティアに参加するようになったのです。最初は不安もあると思います。私もそうでした。でも、周りの人たちが親切に教えてくれます。コミュニケーションが不安を和らげてくれますので、ひとりひとりがスキルを発揮してお互いを補い合いながらワンチームを作っていけばいいと思います。

柴﨑:最初の一歩を踏み出せば、あとは自然と不安が解消されて自信もついてきます。一度参加すると、きっと、“また来たい、また仲間と一緒に活動したい”と思いますよ。緊張感すら楽しんでほしいです。

儀賀:私も最初はドキドキしながら参加していましたが、最後には一体感、まさにワンチームを味わえました。自分に何ができるかわからないという方も多いと思いますが、英語ができなければ、英語ができる人に頼ればいいし、手話ができる人がいれば、手話を一つや二つ教えてもらって帰るのもいい。そんな風に楽しんでもらえばいいと思います。

東京2020大会のテストイベント会場で大会マスコットの「ミライトワ」「ソメイティ」と3ショット。

竹澤:若い方にとって、ボランティアの経験は社会に出てからも役に立つと思います。学校を卒業後、新しい環境で多様な人と一緒に仕事をするというのは大変なことだと思いますが、ボランティアに参加すれば社会に出る前に多様な人と出会えます。リーダーやメンバーの動きを見ながら一緒にチームを作る経験は決して無駄にならないと思います。私自身、本当に成長させてもらいました。

レガシーとして
地域を盛り上げる

――東京2020大会後はどのようにボランティアに携わっていきたいですか。

儀賀:世界規模のスポーツ大会に携われる経験はそうそうないと思いますが、シティキャストへの参加を機に、地元にもっと注目していきたいです。オリンピック・パラリンピックのレガシーとして、地域を盛り上げられたらいいと思います。そして多くの方に向けてボランティアの魅力を発信したいです。

柴﨑:私も地元での活動を今後も続けられるように、自分たちでできることを探しながらやっています。これまでに作ってきた下地をもとに、これからは地元を盛り上げていきたいです。

竹澤:仕事を引退した後、何をしようか迷っているという声をよく聞きますが、やれることはたくさんあると思います。これまでの経験を生かして人生の最後まで楽しめるように、周りのみなさんの手助けをしたいです。

西野:私の地元では防災ボランティアの活動も盛んです。これからは、各ボランティア団体が連携して活動できればと思います。スポーツボランティアのチームが被災地で活動するなど、世代や領域を超えた取り組みをしたいと思います。

ユニフォームを受け取った儀賀さん。「ボランティアを志してから7年越しにこの日を迎えることができて、震えるくらいうれしいです。五輪に限らず、ボランティアが活躍できる機会がこれからもたくさんあればいいなと思います」
ユニフォームを受け取った竹澤さん。「今まで色々なボランティアでユニフォームを着てきましたが、これはポケットにファスナーがあるなど細かい配慮がされているうえに、体にも合ったデザインで着やすそうです」
被災地の役に立ちたいと思ったとき、まず大切なのが「正しい情報の収集」です。自分にできることは何か、いま被災地で求められていることは何なのか。JVOADや災害ボランティアセンター、NPO団体のサイトなどでも情報を得ることができます。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田 暢之さん
被災地の役に立ちたいと思ったとき、まず大切なのが「正しい情報の収集」です。自分にできることは何か、いま被災地で求められていることは何なのか。JVOADや災害ボランティアセンター、NPO団体のサイトなどでも情報を得ることができます。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田 暢之さん
被災地の役に立ちたいと思ったとき、まず大切なのが「正しい情報の収集」です。自分にできることは何か、いま被災地で求められていることは何なのか。JVOADや災害ボランティアセンター、NPO団体のサイトなどでも情報を得ることができます。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田 暢之さん
被災地の役に立ちたいと思ったとき、まず大切なのが「正しい情報の収集」です。自分にできることは何か、いま被災地で求められていることは何なのか。JVOADや災害ボランティアセンター、NPO団体のサイトなどでも情報を得ることができます。全国災害ボランティア支援団体ネットワーク 代表理事 栗田 暢之さん