一人ひとりに寄り添う
小さな努力を重ねて
看護師
川﨑 充さん
インタビュー:大谷津元

プロフィール・略歴

川﨑充(かわさき・みつる)
1988年生まれ。日本赤十字社医療センター整形外科病棟で看護師を務める。高校生の頃に看護師を志す。大学卒業後、6年間大学病院の集中治療室で看護師として働いた後、現職。

このインタビューは学生記者の大谷津元が担当しました。

現在の仕事について

笑顔で退院 何よりうれしい

日本赤十字社医療センターの整形外科病棟に看護師として勤務しています。関節の手術などのために入院している患者さんの、術前・術後のケアが主な仕事です。痛みで歩くのさえ困難で入院してきた患者さんが、笑顔で歩いて退院していく様子を見ると、何よりうれしいですし、やりがいを感じますね。

一人ひとりに寄り添う看護を心がけています。手術前で不安な患者さんには、段階を踏んだ術後のリハビリや、退院までのイメージを丁寧に説明します。また、特に高齢者の方や認知症の方は、自宅から入院という環境の変化で混乱しやすいので、カレンダーを作るなどして、一目で状況がわかるように日々工夫しています。

2020年からはコロナの影響があり、患者さんと家族との面会も制限されています。病院は大変な状況ですが、患者さんには余計な不安を与えず、理解者でいたいです。医療従事者は世の中に絶対に必要な仕事です。覚悟を持って仕事に取り組むつもりです。

今の仕事に就いたきっかけ

母も看護師
その姿を見て育った

学生時代の川﨑さん(手前右)

高校生の頃には「看護師になろう」と決めていました。親族に看護師や医師など医療従事者が多く、自分もいずれはそうなるだろうと幼いころからぼんやり思っていました。何より母が看護師として働いている姿を見て、「やりがいがある仕事なんだな」と感じていました。

看護大学に進学すると、男子は少なく、演習やグループワークでやりづらいこともありました。幸い、同じ高校から男子で進学した友人がいたので、お互い支えになりました。

看護師になって最初は、地元・宮崎の大学付属病院の集中治療室(ICU)で6年間勤めました。若いうちに重症患者さんを看護する仕事ができ、貴重な経験でした。

ですが、慣れてきたころ、だらけてしまう自分に気づきました。「このままずっとここで働くのだろうか」と自分に問いかけ、「地元を出るなら今が最後のタイミングだろう」と思って、日本赤十字社医療センターへの転職を決めました。東京では学会や研修など自己研鑽(けんさん)の場も多くあって、看護師として更に視野を広げたいという思いからでした。

これまでの人生の山と谷

つらい看取り
徐々に乗り越える

看護師をしていると、担当していた患者さんが亡くなってしまうことがあります。そんな時は本当に苦しいです。

整形外科では元気なころからお話をして、人間性まで知っている患者さんが亡くなる場合もあるので、なおさら、つらいです。同僚の看護師たちと自分たちの看護を振り返りながら、徐々に受け入れ、乗り越えていきます。「患者さんにとって良いお別れができただろうか」と自分に問いかけ、常にベストを尽くして、良い看護、良い看取りができるよう心がけています。

男性看護師は増えてきてはいますが、まだ少数派です。男性看護師に担当されるのを、嫌がる患者さんもいらっしゃいます。ですが、転職で上京した直後、とてもうれしいことがありました。

直接の担当ではありませんでしたが、女性看護師を希望された女性患者さんと、ナースコールやリハビリのたびに声かけやコミュニケーションを心がけていました。すると、徐々に心を開いてくれるようになったんです。「どうして上京してきたの」「これからどうしたいの」と話しかけてくれるようになりました。そして「ありがとう」「男性看護師を見る目が変わった」と言ってもらうことができました。自分も「東京で看護師としてやっていけるだろうか」と不安な時期だったので、とてもうれしく、励みになりました。

これから目指すこと

男性看護師として
後輩の目標に

骨粗鬆症の学会に参加した川﨑さん

2020年に「骨粗鬆症マネージャー」という資格を取りました。高齢化社会で、これからは高齢者の方の骨折リスクが大きな問題になってきます。高齢者は骨折すると寝たきりにもなりやすく、それを予防することが大事です。この資格を生かして、骨粗鬆症の早期発見や早期治療につながる仕事をしたいです。

更に、赤十字の大きな使命として、救護班として、災害があった時には駆け付けて看護する役割があります。まだ出動したことはないですが、被災者に寄り添える看護をするために準備しています。

現在は主任看護師です。今後、さらにキャリアを積み、まだまだ少ない男性看護師として、後輩たちの目標になりたいという気持ちが強くあります。男性看護師が増えていくためにも、自分が頑張ろうと思っています。

オフの過ごし方+生活と仕事の両立

不規則な仕事
妻と協力して子育て

休日に長男を抱く川﨑さん

日勤と夜勤のある仕事で、生活は不規則です。妻も看護師をしていて、もうじき2歳になる長男もいます。妻と同時に休める機会は少ないからこそ、そういうタイミングは大事にして、家族で過ごすようにしています。時短勤務や有給休暇も活用して、妻と協力して子育てをしていきたいです。

休みの日は、コロナが広がる前は子どもを連れて近所の大きな公園へ行ったり、温泉へ行ったりしてリフレッシュしていました。最近は絵本の読み聞かせが多いですね。子どもがいつも読んでほしがって、寝る前にはページを開いて、私のところまで持ってくるんですよ。子育ては大変でもありますが、かわいくて、癒やされています。

若者へのメッセージ

遊びも勉強も
自分でコントロール

自分は高校生のころから看護師になると決めていたので、そのための勉強も苦にならず、男性が少ない状況でも頑張ることができました。自分でキャリアを選んだからこそ、責任感を持って働くことができているとも思います。

自分のキャリア選択の幅を広げるためにも、まず勉強を頑張ることはいいことだと思います。

でも学生は遊びも大事だと思います。自分でしっかりと、勉強と遊びの比重をコントロールしながら、将来のことを考えてみてください。

仕事中の川﨑さん