キャリアデザイン座談会

社会人の先輩と学生が、お仕事トーク!

「キャリアデザイン」と一言で言っても、考え方、捉え方は人それぞれ。そこで就職を控えた大学生3名と社会人3名が参加するオンライン座談会を実施し、「働く」について気になるあれこれを聞いてみました。キャリアを考えるうえで役立つヒントがいっぱいです。
また、座談会にオブサーバーとして参加した法政大学キャリアデザイン学部の坂爪洋美先生に、ポイントをまとめていただきました。

社会人メンバー

  • 12年目

    社会人12年目
    Aさん

    大学卒業後、人材紹介会社に就職。社会人大学院にて経営学を学び、起業を経験。その後、再び就職し、現在は、日本のテレビ番組コンテンツを海外向けに販売・制作する企業にて、新規事業として、ホテル客室のテレビを活用した広告メディア事業を担当。

  • 年目

    社会人4年目
    Bさん

    大学(農学部)卒業後、人材ベンチャー企業に就職。入社後複数のアウトソーシング・在宅ワーク・パラレルワークをキーワードとした新規事業に携わる。将来は地元にUターンし、地元に雇用を生み出せるような事業を展開するために、武者修行中。

  • 11年目

    社会人11年目
    Cさん

    大学卒業後、コンサルティング会社に就職。その後日本の教育現場を知るために高校教員に転身。教員退職後、大学院にて教育学(修士)を修め、現在は子ども支援専門の国際NGOにて、日本国内の子ども虐待予防事業を担当。3人の子どもの母親でもある。

学生メンバー

  • 男子学生
    Dさん

  • 女子学生
    Eさん

  • 女子学生
    Fさん

坂爪先生がポイント解説!

慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士課程修了 博士(経営学)。民間企業での勤務ならびに和光大学を経て2015年4月より現職。専門は産業・組織心理学。著書に『シリーズダイバーシティ経営 管理職の役割』(中央経済社、2020年)、『学生と企業のマッチング:データに基づく探索』(法政大学出版会、2019年)、『キャリア・オリエンテーション:個人の働き方に影響を与える要因』(白桃書房、2008年)など。その他、日本労働研究雑誌編集委員、日本労務学会会長などを歴任。

写真:坂爪 洋美 教授

法政大学
キャリアデザイン学部
キャリアデザイン学科

坂爪 洋美教授

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そもそも働くってどういうこと?

Dさん

社会人って、仕事内容に関わらず、毎日働いているだけでスゴイな、と思ってしまいます。まずはそのモチベーションや働く「意義」について聞いてみたいです。

Aさん

3つあります。まずはお金。衣食住はもちろん、文化的な楽しみを得るためにもお金は必要。次に「社会から求められている」という実感。3つ目は楽しさ。大変な時期もあったけど、ある程度裁量が与えられるようになってからは、仕事がグッと楽しくなりました。

Bさん

僕も同意見です。あとは、将来のためかな。将来的に自分のやりたい仕事をしていくには、今、目の前にある仕事を通じて応用できる力をつける必要がありますから。

Cさん

私もお二人と同意見ですが、社会と繋がっている実感も付け加えたいです。自分の仕事によって法律や政策が変わったりすると、強いやりがいと意義を感じます。また私のように子どもが3人いてフルタイムで働く女性というのはまだまだ少ないので、自分が頑張ることで、あとから続く若い世代の人たちに、仕事も家庭も両立できるという道を作っていきたい、というのもモチベーションになっています。

Eさん

私の母は出産を機に仕事を辞めました。まわりにも仕事と家庭を両立している人がいません。両立したからこそ、働くことへの価値観が変わったということはありますか?

Cさん

以前は出張も多く、仕事を第一にバリバリ働いていたのですが、家族が増えたのをきっかけに、子どもと一緒に過ごせる時間も大事にしたいと考えるようになりました。最近は、その場に私がいなければ回らないような仕事は減らすようにしていますし、フレックスタイムやリモートワークができるような柔軟に働ける環境を求めるようになったのも、価値観が変化したからだと思います。

坂爪先生がポイント解説!

写真:坂爪 洋美 教授

仕事って基本的には大変なことが多いですし、なかなか仕事が楽しいとは言いづらい雰囲気がありますが、実際には仕事でしか味わえない楽しさ、達成感があるものです。そのことが社会人のみなさんのお話からよく伝わったと思います。

「今の仕事」はかならず
将来へと繋がっている

Eさん

先ほど、Bさんが将来を見据えて働くとおっしゃっていましたが、みなさん何か目標を持って働かれているのでしょうか?

Bさん

将来地元に帰って、そこに地元の人が携われる仕事を作りたいと考えています。そこに至るための直近の目標としては、現在携わっている在宅ワーカーマネジメント事業を通じて、いつでもどこでも仕事ができる基盤作りをすることです。この事業を拡大させていけば、いずれ地元に雇用を生むことができるはず。未来の可能性は、「今」の繋がりからでしか生まれないと考えています。

Aさん

私は関わっているメディア事業を成し遂げたいという目標はあるものの、その先はまだ見えていないというのが本音です。ただBさんの意見にあったように、今頑張れば絶対に「繋がり」は生まれるもの。やり遂げた実績が、次の事業に繋がっていけばいいなとイメージしています。直近の目標は具体的な方がいいでしょうが、先の目標は、それくらい漠然としていてもいいのではないかと個人的には思っています。

Cさん

私は「すべての子どもたちが笑顔で成長できる社会にしたい」と考えています。それを目指したときに、じゃあ現状どうあるべきかを考えると、まずは子育てがもっと楽になって、子どもをみんなで大事にしようという社会を作ることが必要だと思っています。そういう意味では今の仕事の先にそのビジョンが見えるので、自然と仕事を頑張れています。ただ5年後、10年後と言われると、私もまだ見えていないかも。Aさんがおっしゃっていたように、目の前のこと一つひとつに全力で取り込むことで、先が開けてくるかなとワクワクしています。

Dさん

みなさん仕事を通じて何かを実現したいという気持ちが強いように見えるのですが、そのやりたいことに向かって行動するときに、なにか大切にしていることってありますか?

Aさん

やりたいことをするためには、やりたくないこともやらなきゃいけないと思っています。とくに新人の頃は、上から降ってくる仕事ばかりで、おもしろくないと感じることも多いです。ただすべての仕事には上の方の期待が込められています。100の期待に対して、120、150で返す気持ちでやっていくと、頼まれる仕事の内容がどんどん変わってきて、やがては裁量が増えて自由度が上がるもの。それを知ってからは、どんな仕事でも「圧倒的にやる」ことを大切にしています。

Bさん

仕事をするうえで、「できるか、できないか」は考えないように意識しています。「できるかな」という不安が、その行動を妨げる要素だと思っているので。そしてやると決めたときは、計画性をもって臨みます。まずは現状とのギャップを細かく洗い出すところから始めて、計画が固まったらスピードを持って1つ1つギャップを潰していき、最終的な結果に繋げるようにしています。

Cさん

自分でやると決めて腹をくくるのは確かにすごく重要。私は目の前に壁があったら、とりあえず壁の向こうにカバンを投げる意識を持つことから始めます。投げてしまったらもう取りに行くしかないと、自分を追い込むんです。そして壁を壊すのか、はしごを使うのか、誰かに頼むのか、自分が持っている手段を俯瞰して見てみます。社会人なら努力するのは当たり前。結果を出さなければいけないので、もう必死で考えますよ。

自分の「軸」っているの?いらないの?

Eさん

就活でもよく「自分の軸を持つべき」と聞きます。みなさんは社会人になってからもブレていない印象がありますが、ブレずに軸を持ち続けられる秘訣についてもお伺いしたいです。

Aさん

いやいや、ブレまくっていますよ(笑)。たとえば働き始めた当初からいまの志向性があったかと言われたら、決してそんなことはなく。働きながら視点や視座が変わっていくのに合わせて、軸も動いているように感じています。ただ楽しいと思えるかどうかは、ひとつの軸なのかも。

Cさん

私もけっこうブレていると思っています。大学院までは国際協力にばかり目がいっていましたが、あるプロジェクトでミャンマーの学校に行ったときに、ミャンマーの先生方が抱えていた問題と、日本で私が教員をしていたときに抱えていた問題が一緒だなと思ったことがあったんです。そのときに、ずっと持っていた海外へのこだわりが自分の中からスッと抜けたんですよね。日本でも海外でもこだわらずに、子どもたちのために社会が良くなるように働けばいいやって。

Fさん

そもそもなぜCさんは、子どもたちのために役立ちたいと考えるようになったのでしょうか?

Cさん

じつは小学校のときに友達関係がうまくいかず、学校が嫌いになったことがあったんです。そんなときに出会った本のなかに、アフリカの子どもたちが学校に行きたくても行けなくて泣いているという話を見つけて。私は学校に行きたくないのに、どうしてこの子たちは泣くほど学校にいきたいんだろうといろいろ調べ始めたのをきっかけに、だんだんとその人たちのために頑張りたいなと思うようになったんです。

Bさん

負の側面から軸が生まれるというのは、私も実感しています。僕の場合は地元に対するコンプレックス。人口はどんどん減っていくし、仕事の選択肢も少ない。このままでは本当に自分の生まれ故郷が無くなってしまうかもしれないという危機感が、僕の軸になっています。

Dさん

ということはやっぱり軸って必要ってことなのでしょうか。

Bさん

いや、僕は必ずしも軸を持つ必要はないと思っています。むしろ持っていない方が気楽にいけるという面もあるのではないでしょうか。どれだけ仕事内容や環境が変わっても、結果的にブレなかった部分を軸と呼んでいるだけで、就活の段階で無理やり設定する必要はないと思いますよ。

坂爪先生がポイント解説!

写真:坂爪 洋美 教授

ある1人の人が、都度何かを選択して生きていけば、結果的に自分の軸や、他の誰とも重ならないキャリアが出来ていくもの。他の人と違うからといって不安になる必要はまったくありません。むしろ1人1人違って当然。その時々でしっかりと考えて選択をすることが一番です。