キャリアデザインは
どんどん描き直せばいい

Fさん

みなさんのお話を聞いていると、こんな私でも社会人としてやっていけるのか、なんだか不安になってきました。みなさん、学生のときからしっかりと自身のキャリアについて考えられていたのでしょうか?

Aさん

大学生の頃、将来について真面目に考えたことはあります。ただその後、参加したインターンで現実を知り、あまりの大変さに心が折れてしまったこともあります。実際は、考えていたものとはまったく違った社会人人生を歩んでいます(笑)。

Bさん

僕も農学部で農と食を勉強したのに人材系の会社に就職という想像もしなかった人生を歩んでいます。ですからあまり学生のうちに固めすぎない方がいいんじゃないかな、と僕は思います。むしろ考えることより、動くことが重要。行動さえ止めなければ、自然となんらかのストーリーになっていて、それが結果的にキャリアと呼ばれるのだと思います。

Cさん

私が通っていた大学は、学生同士語り合う文化が根付いていたので、私もどういう風に社会のためになりたいかとか、友達とよく話し合っていました。ただ今振り返ると、Bさんの言葉にあったように、そのビジョンにこだわり過ぎてしまって、身動きが取れなくなることもあったかも。きちんと考えておくことは大切ですが、ギャップが生じたときにうまく対応できるよう、自分のキャリアビジョンとうまく距離を保つことも大切だと思います。

坂爪先生がポイント解説!

写真:坂爪 洋美 教授

キャリアデザインは、要所要所で修正し描き直していくもの。学生時代に描いたキャリアデザインを、そのまま社会人として歩んでいくわけではありません。見直し、つまり選び直し、描き直しが重要であることを覚えておきましょう!

楽しみ?不安?社会にでるときのホンネ

Aさん

私からも学生のみなさんに質問してもいいでしょうか? たとえば私が就活していた頃は、大手志向なら終身雇用を、ベンチャー志向ならいずれ起業を、みたいに、就活と言ってもその会社でどれくらい働きたいかは人によってまちまちだった印象がありました。みなさんは新卒で入社した会社にどれくらい勤めたいと考えていますか?

Dさん

私は入社して10年間は勤めたいと考えています。3年目あたりからリーダー経験を積んで、5年目あたりで責任の重い仕事を任され、10年目くらいで管理職など上のランクに上がるイメージを持っているので、リーダーシップやマネジメント力みたいなものをしっかり身に着けるには10年はかかるのかなと。そのうえでその会社でさらに上を目指すのか、転職なのか分からないですが、次のことを考えていければいいなと。

Fさん

私はDさんより少し短くて5年スパンで考えています。大きな目標として「良い上司になりたい」と考えているので、その会社を支えていけるような上司になれると思ったらそのまま残るでしょうし、違うなと思ったら転職し、別の場所で良い上司になれるよう鍛え直すかもしれません。

Eさん

私もお二人とだいたい同じくらい、5年から10年ほどは働きたいなと。もちろん終身雇用で勤め続けることもメリットは多いとは思うのですが、転職に関してもポジティブに捉えています。転職をきっかけに知識や人脈、技術がステップアップしていくのってなんだかおもしろそうですし、そういうキャリアの積み方にも興味がありますね。

Cさん

そもそもみなさんは社会にでること、働くことって楽しみですか? 不安ですか? 30代半ばあたりまでのイメージ像なんかがあれば聞かせていただきたいです。

Dさん

私はすごく楽しみです。アルバイトの場面でも、困難を乗り越えたときにすごく手ごたえがありますし、社会に出るとさらに大きな課題を乗り越えて成長できるのかなという楽しみがあります。30代までのイメージでいうと、市場価値が自分の頑張りで高まっているはずなので、そこでまた自分のキャリアデザインを見直す機会が持てたらいいなと思っています。

Fさん

人のために何かをするのが好きなので、社会人になって誰かのために働けるのは楽しいだろうとは思うのですが、同時に人間関係がうまくいくかな、といった漠然とした不安もあります。将来のイメージでは、30歳あたりで子どもがいたらいいですね。

Eさん

私もできれば子どもが欲しいですし、仕事とプライベートを両立させたいなとは思っています。あと楽しみか不安かでいうと、楽しみの方が大きいですね。何より学生時代よりもより幅広い人と関わる機会が増えるのが楽しみ。私自身、違う考えを持つ人と交流することで興味を広げてきたので、出会う人が増えれば、自分の世界ももっと広がっていくのかなと思っています。

さん

新型コロナウイルスの流行以降、就職価値観のようなものって変わりましたか?

Dさん

結果的には変わりませんでしたが、一瞬、揺れました。不安定な社会情勢だと、大手のほうが安定していていいのかも?と少し思ったことがあったのですが、よくよく考えてやっぱり自分のやりたい道に進む方が正しいなと思うようになりました。

Fさん

私もあまり就職観は変わっていないのですが、考えなくてはいけないことは増えたなと言う印象は持っています。それは就職に関してだけでなく、これからの自分の人生や、家族についても。そういうことをたくさん考える機会になったので、ひょっとすると就職にも少しは影響があったのかもしれません。

Eさん

コロナが流行しているから就活が不利というのは正直、感じていません。インターンもオンラインだったのですが、オンライン上でも業界研究や企業研究はしっかりさせていただいたので、とくに不安はないです。

さん

今オンラインという言葉が出ましたが、今後オンラインが当たり前の社会になると、地理的な要因による優位性がなくなるので、競争相手が多くなると考えています。そういう時代が到来したときに、自分としてどういう能力で戦っていくのかは、念頭に置いておかなくてはと個人的に感じています。

坂爪先生がポイント解説!

写真:坂爪 洋美 教授

オンラインでも働けるようになると、これまでできなかったこともできるようになります。それだけキャリアの可能性が広がるという意味もありますが、同時に競争が激化するという意味も。ルールが変わっていくなかで、自分をアップデートし続けていくことが、キャリアを繋いでいくときにすごく大事だと思います。

キャリアとはその人の
ストーリーである

Fさん

私はいままで就職活動に対して、正直なところ、「働いたこともないのに何がしたいかなんて分からないよ」と思っていたんです。ですが今日の座談会のなかで楽しいこともつらいこともあるというお話を聞き、それってこれまでの人生でもそうだったなと感じて、少し肩の荷が下りた気がします。分からないなら分からないなりに、社会人になってみてからやりたいことを掴んでいけばいいんだと思うことができました。

Dさん

今日みなさんからお話を聞いて、やり続けることがとにかく重要なのだと分かりました。続けるというのは行動もそうですし、考えることもそう。学生のうちから両方を続ける癖はつけておきたいなと思いました。

Eさん

すごく刺激がもらえました! 就活をするうえで、私はどこか「最初が肝心」と思い過ぎていたのかもしれません。今日はみなさんの話を聞いて、もっと長い視点でキャリアをとらえていいんだなと思うようになりました。キャリアって瞬間的に切り取るものではなく、自分のストーリーなんですね。

さん

そう、壮大なストーリー(笑)。会社に入ると、まずは何者でもない自分という存在を受け止めなくてはいけないのですが、そこからロールプレイングゲームのように、装備をつけてどんどんレベルアップして、技を身につけて、っていう感じかな。仕事はもちろん大事だけど、あくまでも人生の一部であり、どんな人たちとどんな人生を歩みたいのかを大事に、仕事も含めた自分の人生を充実させていってほしいです!