平成28年度 入選作品 映像部門(最優秀・第一席)
最優秀
品川区「いま聞いておきたい!あの日の記憶 壊滅した商店街と満蒙開拓団」
主な内容
東京の5大商店街として賑わっていた武蔵小山商店街は、物資統制により店を営むことが難しくなり、農業を経験したことのない商店主らは家族を伴い満蒙開拓団として満洲に渡った。
開拓団1039人のうち約9割の方が現地で亡くなった、この「満州興安東京荏原郡開拓団」の生還者に話を伺った。
担当者の声
再開発により大きく変貌し続けている品川の中に、都内でも有数の商店街として名をはせる武蔵小山商店街がある。戦時中、この商店街が、理事長を団長に開拓団として海を渡った事実は地元以外ではほとんど知られていない。
「今、話しておかなければ」という強い思いを抱く経験者たちの記憶を、区民に、多くの若者に伝え、後世に残す。
審査員コメント
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武蔵小山商店街の悲惨な過去に焦点を当てる。戦時中、物資統制で存続不可能となった商店街の人々が国のためと満州開拓団として海を渡ったことを知る人は極めて少ないであろう。農業もやったことのない千人以上の中のわずかな生き残りの人たちの貴重な生の声。とにかくいかなることがあっても「戦争はやっちゃいけない」という言葉に、レポーターとなった若い女性も涙をこらえきれなかった。(関)
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戦後70年を期して1年以上の制作期間をかけた貴重なインタビュードキュメント。東京・品川も城南大空襲で多くの民家が焼失した。武蔵小山商店街の商店主たちは物資統制で商売が出来なくなり、食糧の確保のために家族を伴い1039名で満蒙開拓団として海を渡った。農業の経験がないことに併せて、過酷な自然と匪賊の被害での苦労は筆舌尽くし難いものがあったという。敗戦後、ソ連参戦による引揚げ中の惨状は目を覆わんばかりで、番組インタビュアーももらい泣きするほどであった。結局、生きて帰れた者は1039人のうち1割程度であった…「戦争は絶対にやっちゃあいかん!」これが生存者共通の叫びであり、不戦の誓いでもある。(高橋)
動画配信
いま聞いておきたい!あの日の記憶 壊滅した商店街と満蒙開拓団
第一席
豊島区「THE としま遺産 3つの国重要文化財」
主な内容
豊島区の国の重要文化財である豊島長崎の富士塚(昭和54年指定)と自由学園明日館(平成9年指定)、平成28年に指定された鬼子母神堂をそれぞれ紹介する。豊島長崎の富士塚については、富士山信仰と成り立ち、富士塚の山開きを紹介。自由学園明日館については、自由学園成り立ちの時代背景や建築物として優れた明日館の魅力、明日館で行われている「動態保存」について紹介。鬼子母神堂については、国の重要文化財指定を受けての報告会の様子や、御会式など地域のコミュニティー活動のイベント、建築様式の紹介を行う。
担当者の声
豊島区内の重要文化財である豊島長崎の富士塚と自由学園明日館、鬼子母神堂をそれぞれ紹介し、文化財について改めてその魅力を伝える。今年度区内の重要文化財を取り上げたのは、鬼子母神堂が平成28年の7月25日に国の有形重要文化財に正式に指定され、注目を集めた。新しく指定された鬼子母神堂の建物や装飾、地域との催事を紹介するとともに、豊島長崎の富士塚と自由学園明日館という二つの重要文化財も振り返ることで、豊島区の地域性や受け継がれている歴史の魅力を改めて伝えようとするものである。
審査員コメント
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区内の鬼子母神堂が最近、新たに国の重要文化財の指定を受けたことをきっかけに『THEとしま遺産』と銘打って区内の3つの国の重要文化財を紹介する。全国レベルでも世界遺産に登録されると、俄然観光スポットとして脚光を浴びることから、自治体としても、せっかくの指定を内外に知らしめる必要は十分にある。指定時期が古く忘れられがちな2つのスポットもこうして丁寧に解説することで再び大きな価値を感じることができる。(関)
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豊島区の国の重要文化財である「豊島長崎の富士塚」、「自由学園明日館」、「鬼子母神堂」のそれぞれの歴史、由来、その意義などを情報的にも必要且つ十分に紹介している。素晴らしいのは各重文が地域地元の人達にとけこみ、現在まで受け継がれているというその姿である。「動態保存」という言葉は公開しながら保存する、という意味で「自由学園明日館」の場面で使われていたが、その意味ではこの三つの重文は全て動態保存だとも言えるのではないだろうか。そして、もう一つ特筆すべきは安定した移動ショットを要所要所に使った映像の美しさである。切れの良い編集、効果音やNRも質が高く、文化財の価値を更に高めているように思えた。(高橋)
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