令和3年度 入選作品 映像部門
最優秀
足立区 Deaf デフ -手話という言の葉-(YouTubeリンク)
主な内容
ろう者の藤林さんと、家族、仲間たちを追ったドキュメンタリー。
幼くして聴力を失った藤林さんは、調理師になりたいという夢を追いかけて上京し、葛飾区のろう学校で調理を学んだ。
自分はパイオニアになりたいと、一流ホテルに就職。聴者ばかりの職場で切磋琢磨し、独立して飲食店を開業した。しかし、新型コロナウイルスの影響により店は閉店した。
藤林さんの家族は4人で、藤林さんをのぞいては聴者、会話の手段は手話だ。3歳の長女は分からない手話を自分で考えて創ってしまう。幼い娘の独自の手話に、家族みんなで談笑する姿が印象的。
審査員コメント
- どうやって共感してもらうか。視聴者への伝え方をとてもよく考えて作られています。動画の最初の言葉の投げかけ方や、藤林さんを通して視聴者を誘っていく構成の仕方等。聴覚障害者の人と社会のあり方をとても共感させられました。藤林さんと娘さんの手話の会話の風景を見て、手話がとても新鮮に身近に感じました。(阿部)
- 「Deaf デフ -手話という言の葉-」 ろう者の日常を支えるデフ・サポート足立の手話通訳者とろう者の密接な交流がこの企画の核にある。手話と共に生きる人々の思いが繋がる各シーンが、このコロナ禍の中でも手話は日常であることを示している。登場する関係者がマスクではなく透明なフェイスガードを付けているのもろう者に対して口許を隠さないための一端だと感じた。「手話は言の葉」という制作者のメッセージは十分に伝わってきた。(高橋)
一席
清瀬市 市報きよせ令和3年1月1日号新春特別インタビュー 彫刻家・澄川喜一氏(YouTubeリンク)
主な内容
令和2年の文化勲章を受章された、清瀬市名誉市民で彫刻家の澄川喜一氏のインタビュー。
自身の生い立ちや、独立してアトリエを持つために初めて訪れた清瀬市の、当時の自然豊かであった様子をユーモラスに話す。
澄川氏の代表作である「そりのあるかたち」シリーズは、47歳の時に初めて発表してから現在も作り続けている作品だ。日本刀や神社の勾配にあるような、日本独特の“そり”の形を表現したい、日本的に一番美しいと思う形で作品を作っていきたいという思いを、飾らない言葉でユーモアたっぷりに語っている。
なかなか見ることのできない、彫刻家澄川氏の素顔に出会える貴重な作品。
審査員コメント
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とても素敵なインタビューだったと思いました。正直インタビューと作品の写真だけで構成されていますし、結構な時間の動画なのですが、飽きずにずっと見続けてしまいました。きっとインタビューで澄川さんの様々な面を引き出すために、念入りな事前準備がされたからだと思います。インタビューだけでここまで魅力的に仕上げた力量に敬服します。(阿部)
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彫刻家で清瀬市名誉市民、文化勲章受章者である澄川喜一氏のロングインタビュー。彫刻家としては勿論、東京芸大学長、スカイツリーの設計にも携わった今年91歳の文化人である。まず、澄川氏の飾らない率直な人柄に惹かれる。当時の武蔵野線に乗って初めて清瀬に来た時、所謂「肥たご列車」に乗ったというエピソード、作品「そりのあるかたち」に国際性を見出した話など、説明過多にならず、時にはにかみながら話す氏の人柄に魅了されるとともに、引き出し役のインタビュアーの職員の絶妙の質問にも感心した。(高橋)
二席
文京区 ファイブセンスB 戦争の悲劇を忘れない 文の京 区民平和のつどい(YouTubeリンク)
主な内容
「文の京 区民平和のつどい 戦災・原爆資料展」の開催を取り上げ、文京区の平和事業の歩みや展示品の数々を紹介した番組。
文京区では毎年行われている展示であるが、令和3年度は広島市・長崎市との共催で行われた。
オンライン会議ツールを用いて、広島平和記念資料館・長崎原爆資料館の両館長を独自取材し、展示物の解説をしている。
館長たちが語る展示物のストーリー。被爆者一人一人がどんな状況でそれを持っていたか、そしてどうなっていったのか。その話を聞くと展示物は急に身近なものに感じられ、悲惨さは何倍にもなって伝わってくる。
戦争と平和について改めて考えるきっかけとなるように、という願いを込めて作られた番組。
審査員コメント
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反戦や平和祈願の動画もたくさんありますが、この文京区のものはシンプルな作りながら、とても丁寧に作られていると思いました。やはり共感のポイントとして、被害にあった人たち一人一人の出来事を通して、戦争の悲惨さや理不尽さを伝えられることで、自然とその思いが見てるこちら側に湧き起こってきました。地味ではありますが、とても計算し尽くされて、よくできた動画だと思います。(阿部)
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「戦争の被害を忘れない 文の京 区民平和のつどい」という毎年行われる区の平和事業。今年度はオンラインで結んだ広島、長崎と共催で行われたという。両市の資料館館長のインタビューほか、惨状極まる原爆の展示物に圧倒される。コロナ禍の中、10年になる区の地道な取り組みにも敬意を表したい。(高橋)
二席
荒川区 伝統に生きる-あらかわの工芸技術-つまみかんざし・石田一郎(YouTubeリンク)
主な内容
令和元年度 荒川区指定 無形文化財・工芸技術「つまみかんざし」の保持者である石田一郎氏を紹介した番組。
羽二重と呼ばれる正方形の薄地の布をピンセットで折りたたんで花びら等を形作り、かんざしを作り上げていく「つまみかんざし」の技術を持つ職人は、いま全国でも数少なくなっている。
石田氏は伝統的な技術を継承しながらも、現代的なアレンジを加えてオリジナルの多彩な作品を製作しつづけている職人である。
注文が入った七五三用のつまみかんざしの製作工程を追いながら、職人・石田氏の目を見張るような優れた技術と、温和な人となりが紹介されていくドキュメンタリー。
審査員コメント
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伝統技術ものこそ、こういう動画企画がなければ皆が共有できないことなので、とても興味深く見させていただきました。記録としても記憶としても強烈な絵の連続で圧倒されました。惜しいと思ったのは、少し工程の紹介に偏りすぎた気がします。動画の長さのせいかもしれません。コーヒーを味わう石田さんが素敵だったので、もう少し石田さんの地域との触れ合いがあっても良かったかもしれません。(阿部)
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「伝統に生きる―あらかわの工芸技術―つまみかんざし・石田一郎」 そもそも「つまみかんざし」なるものを知らなかったので、石田さんのあのピンセットで布の小片をつまみ、かんざしを仕上げる作業は驚嘆でしかなかった。この気の遠くなるような指先の工程を映像は丁寧にupで追う。やや専門性に過ぎるような気もするが、技術伝承の記録映像としては力作である。(高橋)
奨励賞
台東区 環境ふれあい館ひまわり バケツ稲クラブ~2020年の活動~
主な内容
台東区蔵前にある「環境ふれあい館ひまわり」で例年行われている、親子で参加する“稲作体験プログラム”を紹介した番組。
令和2年度は、バケツで稲を育てる「バケツ稲クラブ」を実施した。偶然にもこの形は、新型コロナウイルスの状況下においても自宅で稲を育てながら観察することが可能で、参加者たちにとって外出自粛下での大きな楽しみとなった。
4月の種もみの受取りから始まり、5月には田植え。7月に再開した環境ふれあい館での活動で“お米”について、様々なことを学びながら、親子は稲を育ててゆく。9月の稲刈りの後、脱穀、精米をし、最後は2月に自宅で試食をするまで、約1年に渡る活動の様子が稲の成長と共に紹介されている。
審査員コメント
- とても丁寧に作られていました。活動の記録ではあるものの、参加してない人にも興味深く作られています。稲を植えてご飯を食べるまで時間もかけ、それぞれの参加者へもしっかり向き合って、参加者の視点で様々な感想も効果的でした。とてもよくできているので、あえて注文をつけるとすれば、視聴者用にも、稲も育て方やお米ができるまでの解説を、しっかり挟み込んでも良かったかもしれません。(阿部)
- 「環境ふれあい館ひまわり バケツ稲クラブ~2020の活動~」 減少している米食への応援歌か?都会の子供たちに、いつも食べているお米がどうやって出来るのか、体験を通して知ってもらう企画。ふれあい館の屋上とそれぞれの自宅でポリバケツで稲を育てるのだが、スズメ対策の風車など映像も面白い。はさかけ、脱穀、もみすり→玄米という工程に目を輝かせている子供たちがこれから米食を盛り上げてくれることを願う。(高橋)
奨励賞
墨田区 すみだの課外授業 すみだの宣伝マンになろう!(YouTubeリンク)
主な内容
錦糸小学校3年生の子どもたちが、“自ら宣伝マンとなり、すみだ水族館をPRする動画をつくる”という課外授業を追ったドキュメンタリー。
水族館を訪れて動画や写真を撮ったり、飼育員たちにインタビューして取材をしていく子供たち。
取材した内容はグループ内でまとめ、PRポイントを探ってどんな動画にするかを話し合う。
また、テロップやナレーションはどうするか、相手に伝えることの難しさに苦労しながらも、クラスの友達や飼育員たちへの試写会でアドバイスをもらい、最後には理想のPR動画を完成させていく。
審査員コメント
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とても楽しく、そして興味深く見ることができました。すみだ水族館の宣伝を子どもたちが作っていく過程を描くことで、水族館の宣伝のみならず、墨田区の地域での取り組みや地域そのものへの眼差しも伝えることできていて、結果、墨田区の広報に仕上がっているところがとても面白いと思いました。いい広報とは?と考える、一つのいいきっかけになりました。(大井)
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小学校3年生の課外授業で、すみだ水族館のPR動画をつくって、人にものを伝える事の難しさを体験してもらおうという企画。子供たちのややまごつきながらも生き生きと取り組む姿は健気で可愛い。ただ、小学生の質問がやや意味不明のままであったりした点、それと動画を全部紹介するより指導のポイントなどをもう少し詳しく視たいと思った(高橋)
審査を終えて
審査員のお二人から全体を通じたコメントをいただきました。
- 最優秀の足立区の作品は、題材となった藤林さんご家族のやりとりを通じて見る人を惹きつける映像となっていました。気づきや発見も多い作品でした。
- 第一席の清瀬市の作品は、インタビューのみというシンプルな構成でありながら見る人を引き込む作品でした。入念な事前準備をされたのでしょう。インタビュアーの距離の取り方も適切で見事でした。
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