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広報・広聴

平成25年度 広報紙部門 総評

公開日:平成27年(2015)3月30日更新日:平成27年(2015)3月30日

大井委員

「行政施策をコミュニケートする」、「生活情報を提供する」、これらは自治体広報紙の重要な役割であることは論を待たない。が、「どのよう に」となると、ことはそれほど自明ではなくなる。「どのように」を「いかなるメディアによって」に置き換えると、問題はますます厄介になる。行政と住民を つなぐコミュニケーション・メディアは広報紙に限らない。今日「ネットメディア」の用語が、日常生活のごく普通のコンテクストに登場し、既存のマスメディ アを補完するような役割を果たすようになっている。つまり、自治体の「行政施策」をコミュニケートする、「生活情報」を提供するメディアは広報紙に限らな い時代がやってきた。本年度のコンクールの事前審査の過程で、何度も頭をよぎったのは、紙媒体の広報紙の機能・役割を改めて問い直さねばならない、そうし た時代になった、という思いであった。

少し敷衍すれば、この多メディア状況は、ソーシャルメディアの発展、他方でデジタル化の恩恵を必ずしも享受できないデジタル・デバイド、メ ディア接触行動の断片化、多様化、といったコミュニケーション・メディア環境をもたらした。この環境は、別の言い方をすれば、あらゆるメディアが読者・視 聴者の注目を引こうとして競い合う環境であって、その環境の下で、マスメディアを含む、伝統的なメディアのメディア環境における支配的地位は相対的に大き く低下してしまった。広報紙にとっても容易ならざる時代がやってきた。スローガン風に言うと、広報紙はどうなるのか、どこへ行くのか。

さて、新年早々縁起でもない予想はこれくらいにして、本年度のコンクールの審査を終えての総評をいくつかの論点に絞って、以下記すことにしたい。

第一に指摘すべきは、上記のような注目を競い合う多メディア状況にあって、ダイレクトにメッセージを伝えようとする試みが、なかなか実現されにくい 環境にある、ということである。応募作にも散見されたが、このことを認識して、伝えるべきことを絞り込む、つまり「あれもこれも」から「あれかこれか」に 大きく方針を転換した、と思われる作品が目についた。そこでは情報内容を、価値を十分に吟味する編集力(エディターシップ)が求められる。これをどう磨く か、これからの広報パーソンにも期待されている能力といえるだろう。

第二は、広報パーソンの心構え、とでもいうべき問題である。時代が目まぐるしく変化する状況にあっては、彼ら/彼女らに必須とされるのは、変化の中 にあって先を読む、先を見る姿勢であろう。一歩前ではなく「半歩前」で構わない、むしろそれが求められているのである。住民よりも一歩前ではなく、半歩 前、住民に寄り添いながら少し前を見通す、時代の空気を掬い取る、といった姿勢が重要であろう。いくつかの応募作には、そこに自らの位置を定めて、住民に 視線を向ける試みがなされていた。高く評価をしたい。

第三は、絶えず修正、更新が可能なインタラクティブなデジタル・メディアと違って、広報紙はいったん紙面が出来上がった途端の作者の手を離れる。 メッセージがどのように受容されるかは、読者にゆだねられる。極論すれば、読者には誤読する権利があるのであって、用字、用語の適切さから始まり、読まな い人に、まず手に取らせ、読ませることはもちろんのこと、正しい読みを誘導する仕掛け、仕組みを工夫することが、誤読を避ける要諦である。当たり前のよう だが、大事な心構えである。

第四は、「仕事は楽しく」である。文章によって人に影響を与えるために、何が必要だろうか。英国で「ジャーナリズムの父」と称されるダニエル・デ フォーは、「楽しませる、面白がらせる」ことと喝破した。それを踏まえると、人を楽しませる、面白がらせるためには、まず筆者自身が楽しみながら、面白 がって仕事をする必要があるのではないか。高い評価を得た応募作品には、紙背にそうした楽しく仕事をしている筆者の姿をイメージすることができたのであ る。

第五は、読者は、活きのいいニュース、情報を求めている、ということである。広報紙と雖も、ニュースや情報を扱う限り、古い情報よりも新しい、可能 な限り最新の情報を提供しなければならない。扱う情報それ自体が古い起源をもっていても、「今、ここに」に取り上げるのならば、新しく見せる、思わせる仕 掛けが必要である。マスメディアでよく使われる、「このほど…が明らかになった」はルーティンにつかわれる手法である。何が、どこが新しいのかをじっくり と吟味して、その新しさを明確に伝えることが、この種のニュースや情報に求められている。

第六は、「地域とのかかわりを改めて見直す」である。昨年は、世界遺産として「富士山」が、その後「和食」も選ばれ大きな話題となった。これを契機 に、富士山や和食を巡る大きな議論が沸き起こった。日本は世界から見れば一つの地域である。グローバルな視点から、地域をとらえなおす試みが多種多様にな されることになった。これと類似した構図で、ナショナルな視点から地域とのかかわりを改めて見直す、この作業を作品化しているいくつかの応募作があった。 具体的には、地域の文化的資源の価値を新たな視点から問い直し、付加価値を新たなアプローチで促進する試みであった。高く評価したい。

最後になったが、広報紙を取り巻く状況は、広報パーソンにとって、決して追い風となるようなものではない。むしろ厳しいといっていいだろう。メディ ア環境の激変、予算やスタッフのといった数々の制約条件の中で、住民とのコミュニケーションリンクを維持、発展させようとしている関係者の皆様に、大いな る敬意を表したい。

長岡委員

本年度の応募作は、様々な企画やテーマで特集が組まれている。訴求する内容も地域のイベント告知、施設の紹介、住民のボランティア活動報告、 防災・防犯に関する情報、健康に関する情報等、同一テーマの企画は少なく多彩な企画紙面を目にした。企画それぞれに、住民に対する熱い思いと行政のビジョ ンを感じる。また、住民参画の企画紙面が多く見受けられ、訴求効果が期待できる編集企画であった。

編集紙面では、町からの応募作を除き、区・市の広報紙は、デザイン・レイアウト等の表現面を外部に委託している行政が多い。その意味で企画設定と、 どのように住民に伝えるかの編集力が、広報担当者のディテクション能力となる。その観点で紙面を審査すると、見出し、リード、小見出し等を上手に活用し、 訴求情報をわかりやすく住民に伝える編集紙面を多く目にした。確実に編集技量とディレクション力が向上している。

一方、どの広報紙も「お知らせ」情報が複数紙面で台割されている。「お知らせ」紙面は、住民の生活に欠かせない重要な情報である。多くの情報で構成 されている「お知らせ」紙面に求められるのは、住民視点に立った情報の区分けと検索機能である。応募作の情報の区分けは、大分類と小分類に区分けされてい る。分類の表示は、目立つ文字の書体・大きさ、色、デザイン処理で、検索機能を考慮した表現が施されている。各情報も端的にまとめ表示されており、住民視 点での編集紙面である。また、「お知らせ」紙面の多くが横組で表示されている。期間や時間等の数字情報が多い紙面であり、読みやすさと紙面の面積を考慮し た文字の組み方となっている。情報量の多い紙面であり、横組の設定は適切な判断といえよう。

表現は、応募作の大半がタブロイドサイズである。かつてのタブロイドサイズの紙面表現は、多くの情報を同一紙面に掲載する「新聞スタイル」が主流で あった。しかし昨今では、紙面の視覚化と共に、紙面ごとに単一若しくは少数の情報を構成する冊子と同じ表現スタイルが大半となった。冊子スタイルの表現 は、紙面に変化が付けやすく見やすさと共に訴求情報が住民に伝わりやすい利点がある。応募作は、視覚化世代に対応した紙面表現といえる。

複雑化する社会において、行政の役割はますます多様化し様々な施策が求められよう。住民と様々な行政施策を共創するとともに共有化を行い、施策への 住民参画が今以上に求められる。住民視点での編集アプローチを心がけ、住民への施策行動紙になるよう、広報担当者に更なる編集スキルアップの挑戦に期待し たい。

このページに関するお問い合わせ先

広報広聴部  広報課 
電話番号:03-5388-3087