すべての人が自分らしく
働ける社会を目指して
ダイバーシティ促進
ベンチャー代表
星賢人さん
星賢人さんインタビュー
星賢人さんプロフィール

プロフィール・略歴

星賢人(ほし・けんと) 1993年生まれ。大学院在学中に、「株式会社JobRainbow」 を立ち上げる。フォーブスが選ぶアジアで最も影響力のある若者30人(Forbes 30 under 30)の社会起業家部門に日本人として唯一選出。若手起業家として、国内・海外のテレビやマスメディアなどでも注目を集めている。

現在の仕事について

ダイバーシティを促進する
事業・サービスを運営

星賢人さん写真1

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進する企業に向けた研修・コンサルティングや、企業のLGBTに関する取組をはじめとするD&I情報がわかる求人情報プラットフォームの運営を行う株式会社JobRainbowの代表取締役CEOを務めています。今はだんだんとLGBTに対する認知度や理解度が高まってきていますが、私が大学生の頃は、その存在さえ知らない人もたくさんいました。そのため、LGBTに配慮された社会ではなく、当事者である私たちは様々な場面で生きづらさを感じていました。特に就労・雇用面での課題は多く、就職活動で思い悩む友人や先輩がたくさんいました。

私自身も就職活動に不安を抱えていましたが、大学3年の時に参加した日本マイクロソフトのサマーインターンで、嬉しい驚きがありました。社内にLGBTサークルがあり、様々なセクシャリティを持つ人たちが、活発に交流する場があったのです。さらに、同性婚をしたレズビアンのカップルが、結婚祝い金や結婚休暇の取得といった福利厚生を受け、なおかつ周囲から当然のように祝福されていたのです。日本にもこんなに素晴らしい企業があるのかと嬉しくなると同時に、この情報を必要としている人たちのところに届けようと考えました。そこで、LGBTに配慮した制度や環境がある企業の情報を、就職・転職活動をしている方に届けるための口コミサイトをスタートさせました。そして現在は、LGBTに限らず、様々な多様性を持つ人たちのための求人情報サイトとしてサービスを提供しています。

ほかに、コンサルティング事業も行っています。我々が求人を出してほしいと思っていても、企業がダイバーシティに取り組めていない、あるいは取り組みたくてもその方法がわからないというケースが多くあり、企業側の体制が整わない状況が続いていました。そのため、企業を根本的に変えるための研修トレーニングを提供し、様々な多様性を持つ人たちが活躍できる土台作りのサポートをしています。

今の仕事に就いたきっかけ

怒りと悔しさを強く感じ、
起業を決意

星賢人さん写真2

大学時代にLGBTサークルに所属していましたが、サークルの先輩たちは就職活動でとても困っていました。特に、仲の良かったトランスジェンダーの先輩が、面接官からひどい扱いを受けたことをきっかけに、就職を諦め大学も中退してしまうということがありました。世の中のセーフティネットが全く機能していないことを痛感し、怒りと悔しさを強く感じる一方で、この課題をなんとしてでも解決したいと思うようになりました。少子高齢化で労働人口がこれだけ減っているのに、多様性を持った人たちが活躍できないことは大きな損失です。社会にとっても個人にとってもwin-winな関係を創るため、起業を決意しました。

自分の決断全てにおいて大事にしていることが、「後悔最小化戦略」をとることです。これは、選択に悩んだ時、後悔が最小になる道を選ぶという考えです。後悔が最小化される道を選んで行けば、それは自分の人生の終わりに後悔が最も少ない生涯を歩んだと言えると信じています。卒業後に内定していた企業に就職するか、自分の会社を続けていくかで悩んでいた時も、会社をやらないとなった場合、救えたはずの人々を救えなくなってしまうことは、私にとって一生の後悔になると思ったので、後悔を最小化するために会社を続ける道を選びました。

これまでの人生の山と谷

辛かった中学時代、
そのとき救われた一言

星賢人さんの人生の山と谷パソコン版 星賢人さんの人生の山と谷スマホ版

中学入学当初は、いつも周りに人が集まる、クラスでも目立つ存在でした。しかし、思春期を迎えたあたりから、同級生との違いを感じ始めました。男子校ということもあり、友人たちが異性の話で盛り上がっている中、同性が気になっている自分は、周りとは違う存在であると自覚しました。特に保健の教科書に書かれていた「思春期になると自然と異性と惹かれ合う」という言葉に、自分は不自然な存在だと思い悩みました。一番大切な家族にさえ打ち明けられず、人とコミュニケーションを取ることが怖くなりました。

さらに、同級生や部活仲間からいじめを受けるようになり、ほとんど学校に行かずに、ネットカフェでオンラインゲームをして過ごすようになりました。一番辛い時期でしたが、ここで出会ったゲーム仲間の一人に、自分がゲイであることをカミングアウトしたところ、「そんなの全然関係ないよ、君は君だからね」と認めてもらえたのです。ありのままの自分を受け入れてくれる人の存在が大きな支えとなり、高校には通うことができました。

転機が訪れたのは大学時代です。大学では、自分らしく過ごせる環境を求めてLGBTサークルに入りました。初めて自分のセクシャリティを人と共有していくことで、今までいかに自分を押し殺していたかに気づきました。そして、マイノリティ性を共有できることの安心感を得ることで、自分と同じように思い悩む人のセーフティネットになりたいと考え、サークルの代表になりました。


これから目指すこと

「ダイバーシティのパイオニア」
そして「個になめらかな社会」

⽇本最⼤規模のインターネットカンファレンス「B Dash Camp」にて
⽇本最⼤規模のインターネットカンファレンス「B Dash Camp」にて

長期的なビジョンは「差異を彩(さい)へ。自分らしく誇らしく。」ですが、今年の目標としては、「ダイバーシティのパイオニアになる」というスローガンを掲げています。本当の意味でダイバーシティ&インクルージョン、つまり人材の多様性を認め、受け入れて活かすことに取り組めている企業は少なく、評価点でいうと20点前後が当たり前の世界です。これを60点70点と押し上げていくことが求められていますが、これを実現するためには、社会に対してより大きいインパクトを与えられる立場にある必要があります。そのためにも、「ダイバーシティといえばJobRainbowだよね」と最初に思い出してもらえるような、パイオニアになることが重要であると考えています。

目指す世界としては、「個になめらかな社会」という表現をしています。いまの世の中では、ある一定の枠が描かれていて、その枠に当てはまらない人は、歪みや痛みを感じる状況になってしまっています。例えば「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といった考えがこれに当たります。そうではなく、その枠を広げ、多様性を持つ人たちも中に入れる形を作ることが必要になってきます。つまり、個人が頑張って社会システムに合わせるのではなく、社会システムが個人に合わせて変化していくことが求められているのです 。以前に比べれば、社会は多様性を受け入れてきているようにも見えるかもしれません。しかし、日本のLGBTの大部分は、一番身近な存在である家族にさえカミングアウトできていないといわれています。LGBTに限らず、様々なセクシャリティを持つ人、育児や介護をしている人、外国籍の人、障害のある人などを含め、すべての個人が生きやすくなる社会を目指しています。

オフの過ごし方+生活と仕事の両立

友人と語り合い
新たな世界へ興味を広げる

休日は本を読んだり、ゲームをしたりしていますが、今年は体を鍛えようと思ってボクシングジムに通っています。あとはSFが好きなので、自分が読んだSF小説について語り合う会を友人と企画しています。ただ読書をしているだけだと、自分の興味がある本ばかり手に取ってしまいます。それは、知識を深めることには繋がりますが、自分の視野を広げることには繋がりにくいです。新たな世界への興味を広げていくためにも、これからは今まで以上に、人の興味関心に触れ、語り合うことを大事にしていきたいと思っています 。

仕事とプライベートの両立という点で、私はその境目をしっかりと分けないようにしています。例えば、起きている時間の80%を仕事、20%をプライベートの時間としてきっかり分けてしまうと、すごく窮屈に感じてしまいます。そうではなく、50%を仕事、10%をプライベートとし、残りの40%はその日の体調や気持ちに合わせて仕事とプライベートの割合を調整する時間とします。そうすると、毎日柔軟に動くことができるようになります。仕事に集中したい日は、最大90%まで仕事に没頭できますし、すごく疲れてゆっくりしたい日は、50%をプライベートに充てることができ、自分の時間を上手くコントロールできます。

    

若者へのメッセージ

自分の人生のオールを
絶対に離さないで

星賢人さん写真4

チャレンジしないことには何も生まれません。人生の99%は運で決まるといわれていますが、サイコロを振った数だけサイコロの目が出ます。どんな目でも一喜一憂せずにサイコロを振り続けることが大事だと思います。川に流されることもあると思いますが、自己決定権を持って生き続けるために、自分の人生のオールはしっかり握りしめて絶対に離さないでください。