野外彫刻
東京都では、平成2年度から野外彫刻に関する事業を行っています。
この事業は、都立公園に彫刻作品を設置し、都民が優れた芸術作品に気軽に親しめる、うるおいのある野外空間を創り出そうとするものです。
設置されている作品は、いずれも、作家が周辺環境を考慮しながら、情熱を傾けて制作したもので、芸術性の高い優れたものです。
また、これらの彫刻作品を常に心地よくご鑑賞いただくため、東京都では、メンテナンスにも配慮しております。
憩いのひととき、木々のざわめきや草花のおしゃべりを聞きながら、“ちいさな屋外美術館”で彫刻作品に触れてみてはいかがでしょうか。
臨海副都心
「ROUND STRUCTURE 1995」内田 晴之
この作品は、3本の円弧で構成され、それぞれを再構成すると1つの円になります。この円を、1つの宇宙であり、また、1つの生命の源と考えています。そして、彫刻のフォルムと色彩で、生命のエネルギーと上昇する精神を表現しました。
「碧空の花」眞板 雅文
植物の芽ぶきは未来に向かっての新しい門出にも似ています。同じ形を連続させて空中に曲線を描きますが、上に重なるものほど大きくしてあります。これは造形上の美しさと希望の広がりを意図しており、太陽の光と海からの風の采配で、舞うように碧い空にのびてゆく軽やかな力を、新しい都市空間に表現しました。
「重力の無い杜」斎藤 史門
大木の木立の中に入り込んだような錯覚をします。まるでそこは鎮守の森に迷い込んだ神聖な空気が流れています。そこには鉄のもっている重量感は失われ無重力の世界が存在します。この異空間の世界に入り込むと、そこは何もかも吸い込んでしまいそうなエネルギーを感じます。まるでブラックホールの入口のようでもあります。
「潮風公園(シーブリーズパーク)島の日曜日の午後」福田 繁雄
海に向かった東西方向の視点ではグランドピアノを演奏するピアニストに見え、南北方向の視点からは、スーラ(1859-1891)の(グランドジャット島の日曜日の午後)をイメージした7体の憩う人々に見える立体の面白さを、新しい東京のウォーターフロントの楽しい公共造形としてデザインしました。※現在、潮風公園護岸改修工事に伴い、水の広場公園へ仮移設しています。
「’96 美神の門」杉山 惣二
古代の柱、女神、そして電波のアーチ・・・この3つの構成は未来の「門」でもあります。古いものと新しいものを組み立て、そして女神に願いをたくしました。住みよい地球、そして人類への幸せへの祈りが、この新しい臨海副都心からテレパシーに乗って発信出来たらと願っています。
「円と方形-四季」小田 襄
かたちの単純化を求め根源を探ると、やがて円形と方形に還元され、その魅力はながい間のテーマになっています。円形と方形はかたちの原点として存在するからです。風情ある日本の四季の移ろいと色どりを映す一つの塔として円と方形を組み合せ、反射と透視、そして虚と実を構成しました。
「待ちましょう」津田 裕子
行き交う人々をながめながら、昼も夜もそして明日も、もしかしたら、もっとずっと先かもしれない、あの人を待つ、そんな恋人達がいるのだろうか。何にでもいそぎ足の私達。心が自然に満ちるまで、-待ちましょう、そんな思いが込められています。
「地殻-シルリアの海」岡本 敦生
シルリア紀とは、今から約4億年前、人類の祖先である、背骨を持った原始生命が太古の海の中で産声を上げ始めた時期のことを言います。私たちが踏み締めている大地は、数十億年という生命の歴史を蓄積しているのです。この彫刻の空間の中で、地球の上に生まれた貴重な生命、その壮大な流れの中に私たちがいることを思ってほしいと考えています。
大井ふ頭中央海浜公園
「翻(ほん)」多田 美波
姿は見せないけれど、東京湾をわたってくる風は、公園に往きかう人々の心に安らぎを与えてくれます。
風の形を彫刻に託して・・・。
光と時の共演を得て、見る人々の心の中に様々な姿を演じてくれることを希って。
「わかば」佐藤 忠良
見上げる段の両側に、樹林が空への美しい空間を描き出してくれていたので、その石段の頂点に女性を直立させ、もう一つの新しい空間を樹と空とに競合させてみたかったのです。
若葉を指にして。
「三人三様」掛井 五郎
広場で子供たちの声がします。中に入ると大きな顔が現れ、空にはお母さんが浮かんでいます。口を開け目を丸くして、お父さんは立っています。草も木も空まで、皆一緒になってオドケています。お父さんの目から小鳥が飛び立っていきました。
「碧翔(へきしょう)」一色 邦彦
〈乙女〉、〈不死鳥〉、〈地球〉二 環(たまき) で構成されるこのモニュメントは、愛と夢、そして地球上の全てのものとの共生と合歓を希求し、碧空に飛び発つ乙女と不死鳥の態を表現したものです。
「南の空へ」加藤 昭男
旅立ちの浮き立つ思いと、その先に広がるロマンを、鳥と人物を組合わせて表現しました。
夕日を背景にしたとき、彫刻に宿る光と影の美しいシルエットに、そのイメージを託して制作したものです。
「HELIX(ヘリックス)」脇田 愛二郎
ラテン語でらせん(螺旋)の意味。鏡面の多面体は、周囲の松と運河の水の変化を刻々とつたえてくれるでしょう。
「波貌(はぼう)」建畠 覚造
この作品のウエイブする柱は、無限に上昇する志向を現わし、また、その鏡面は周囲の環境を映し取りながら微妙に変化します。人々はこの作品をめぐることによって、曲線から直線に変貌する不思議な姿を見ることができます。
「遠くがみたい」土谷 武
この彫刻は、水と空と岸辺の緑のためのものです。景観のための彫刻であるから、弧空に額縁を造り空や水に触手を伸ばしました。ときには、下縁のベンチに座って彫刻のなかから遠くをみて楽しんで欲しいのです。
府中の森公園
「球を囲う幕舎(きゅうをかこうばくしゃ)」保田 春彦
その昔、モーゼがヘブライびとをつれてシナイの荒野をさ迷ったとき、野営の幕舎を張って聖櫃を安置させたという。このヘブライ神話は、作者が近年主題とする「現代の聖域」のイメージに図らずも合致して制作の発想となりました。
「鳩もつ少年」舟越 保武
すこやかな少年のすがたが、青い空に羽ばたく望みを胸に描いて、野に立つ若くたくましい姿を作りました。
「アンとミッシェル」朝倉 響子
鳥のさえずり、風の音、すべての自然のリズムの中に、やすらげる空間、ふれあう空間、親しまれる空間を表現したい。
二人のある瞬間のフォルムが、虚構と現実のはざまでときのひろがりを感ずるように。
「7月(七夕)の樹」向井 良吉
“七夕”は、天の川を挟んだ牽牛星と織女星が年に一度川を渡って逢瀬を楽しむ日という、乞巧奠と呼ばれる星祭です。織女星にあやかって技芸が上達するように祈ったり、子供たちは、折づる、短冊、星切紙に願いごとを書いて吊るしたり、現代とはいささか離れた行事ですが、わが国の民族の伝承行事です。
一直線に延びるプロムナードの見通しを妨げぬよう、樹木をで型どり、ワックス工法という独特の鋳造法で造りあげました。
※写真は設置当時のものです(現在、園内の別の場所に移設)。
「カリュアイの柱」江口 週
ペルシャ戦役の際、ペロポネソスの一国カリュアイ(Karyai)はペルシャに味方したため、ギリシャの勝利ののち、少女たちが奴隷として連れ去られたという伝えから、梁を支える柱としてこの像が公共建築物に用いられるようになったという(Caryatides)。女像柱。この故事から、失われた少女たちの青春と愛への贖罪として抱擁のかたちをもった柱状の彫刻、モニュメントとして表現し、「カリュアイの柱」と題しました。
「少女」笹戸 千津子
緑に囲まれた広い空間の中で、思いがけない出逢いの人々と爽やかな語らいの時がもてることを願いながら、ちょっとおどけたポーズで立たせた「少女」の像に、子供らしい優しさをも表現できればの想いを託して。
「少年」雨宮 敬子
何気ない少年の身振りの中に、ある種の新鮮な感動を覚えました。少年のさわやかな躍動感を、のびやかでしなやかな姿態の中に表現したいと思いました。
「道標・鴉」柳原 義達
鴉は、神武天皇の道案内をしたといわれるように、人間と深く関わった鳥です。そして、今でも人々とともに生きています。
府中の森公園の入り口に設置された私の鴉の彫刻は、美しい公園の道案内ができ大変幸福です。公園のなかでは、ほかの多くの彫刻が皆様を喜ばせてくださいます。
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